6月18日(水)「愛の渇き」

「愛の渇き」('67・日活)監督・脚本:蔵原惟繕 原作:三島由紀夫 脚本:藤田繁矢 撮影:間宮義雄 音楽:黛敏郎 出演:浅丘ルリ子/石立鉄男/中村伸郎/山内明/楠侑子/小園蓉子/紅千登世
三島由紀夫の同名小説を蔵原惟繕監督、浅丘ルリ子主演で映画化した文芸メロドラマ。大阪の豊中付近の大邸宅。未亡人・杉本悦子は夫の死後も杉本家に住み、いつしか義父と深い関係におちいっていた。ある日悦子は下男・三郎の粗野な肉体のたくましさに心ひかれるが、三郎は女中に子を孕ませていた。・・・。
「執炎」と並ぶ蔵原惟繕監督の代表作で、果てることのない愛のさすらいが白黒画面の中に鮮烈に灼きつけられた。「執炎」で演技開眼したといわれる浅丘ルリ子、ここでも期待にこたえて難役をみごとにこなし、日活唯一の演技派スタ−の地位を不動のものにした。特に、ルリ子扮する未亡人が、下男の三郎に抱かれるものの、彼の強い抱擁が単なる男の暴力にすぎないと訴え、三郎をつき放すシ−ンは圧巻。浅丘ルリ子の女心のもろさと毅然とした外面の二律背反ぶりを示す演技は、実にみごとであった。なお、蔵原惟繕監督は、この作品を最後に日活を退社しフリ−となった。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎さすが三島の原作だけあって、大邸宅に展開されるドロドロの人間模様という意表を突いた設定が類型的で、悦子(浅丘)が三郎(石立)に対して「お前」を連発するのが鼻に付いて、こんな嫌なオンナを我が浅丘ルリ子には演じて欲しくなかったと、見終えてつくづく思ったことだった。「執炎」と比べれば原作の質の違いがはっきりと現れている。呑気呆亭