6月17日(火)「夜霧よ今夜も有難う」

「夜霧よ今夜も有難う」('67・日活)監督・脚本:江崎実生 脚本:石森史郎/野上龍雄 撮影:横山實 照明:藤林甲 音楽:伊部晴美 出演:石原裕次郎/浅丘ルリ子/二谷英明/高品格/郷硏冶/佐野浅夫/太田雅子
★ボギ−とバ−グマンの「カサブランカ」を日活が翻案して、石原裕次郎浅丘ルリ子で映画化した。横浜でナイトクラブを経営している相良(石原)の前に、かつての恋人秋子(浅丘)が突然姿を現わし、彼女の夫である東南アジア出身革命指導者・グエン(二谷)の密出国に力を貸してくれという。最初は冷たく断っていた相良だが、やがて・・・。
そろそろ青年期から離れるところにさしかかっていた裕次郎(当時33歳)をうまく使ったム−ド・アクション。構成は「カサブランカ」そのままだが、情感たっぷりの名セリフが裕次郎に相応しく散りばめられていた。同名の主題歌は映画に先行して大ヒットした。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎“君の瞳に乾杯!”のボギ−のセリフに対して、この映画のキ−ワ−ドである“男三人と女二人”のセリフが、浅丘ルリ子の口から発せられることで、「夜霧」は 設定をパクッた「カサブランカ」とはまったく別の映画になった。「カサブランカ」には戦争という重い背景があるが、この映画には“男三人と女二人”の子をもうけることの出来なくなった女の愛と哀しみが描かれている。その浅丘を繞る相良(石原)とグエン(二谷)の葛藤と相克も不自然ではなく、特に裕次郎は若き日のそれとは違った存在感を漂わせ、過酷な過去を抱えて法と無法の間を生きてきた精悍な風貌の男を見事に造形してのけた。ム−ド・アクションなどと軽く扱われているが、これは江崎実生の傑作である。呑気呆亭