6月12日(木)「噂の二人」

「噂の二人」('61・米)製作・監督:ウイリアム・ワイラ− 原作:リリアン・ヘルマン 脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ 撮影:フランツ・プラナ− 音楽:アレックス・ノ−ス 出演:オ−ドリ−・ヘップバ−ン/シャ−リ−・マクレ−ン/ジェ−ムズ・ガ−ナ−
★'36年にヘルマンの戯曲「子供の時間」を「この3人」という題で映画化したワイラ−が、25年を経て再映画化。寄宿制私立学校を経営するふたりの女性が、突然“同性愛”という汚名を着せられ、やがて悲劇的な結末を迎えるまでを、確かな演出力で描ききる。(ぴあ・CINEMA CLUB)

アメリカ女子サッカ−の名選手アビ−・ワンバックがチ−ムメイトのサラ・ハフマンとの同性婚を公表したのは昨年(2013年)の10月のことだったが、世界はそのニュ−スを大して騒ぎもせず受け入れたと記憶する。子供の悪意により拡がった同性愛の噂で事業も友人の命も失ってしまうこの二人の女性の運命を考えると、50年という時間がもたらした変化に隔世の感を覚える。しかしその変化は、原作戯曲を書いたリリアン・ヘルマンや、二度にわたってこの原作を映画化したウイリアム・ワイラ−や、恐らくは演ずることに或る種の勇気を必要としたであろうヘップバ−ンとマクレ−ンや、制作に関わった他のスタッフ・キャストの闘いが、少しずつ少しずつそうした変化をもたらすのに力を貸したのではなかったろうか。思えば今のアメリカ合衆国の大統領は黒人のオバマである。これまた50年前には考えられなかったことである。小説や映画には時代を変える力などないように思えるが、粘り強い試みの継続が50年経ってみると或る達成を成し遂げたのであることをこの映画は教えてくれた。呑気呆亭