6月7日(土)「真夏の夜のジャズ」

真夏の夜のジャズ」('60・米)製作総指揮:アラン・グリ−ン 製作:ハ−ベイ・カ−ン 製作・監督・撮影:バ−ト・スタ−ン 監督:アラム・アヴァキアン 撮影:コ−トニ−・ヘイフェラ/レイ・フェアラン 音楽:ジョ−ジ・アヴァキン 出演:ルイ・ア−ムストロング/セロニアス・モンク/アニタ・オディ/ダイナ・ワシントン/チャック・ベリ−/チコ・ハミルトン/マヘリア・ジャクソン
★音楽を扱ったドキュメンタリーの中でも、映像的には最高水準にある作品で、幾度のリバイバル上映に耐え、新たなジャズファンを開拓している。まるで南仏のように、フィルムに捉えられたロード・アイランドの夏。第5回ニューポートJAZZフェスティバルが華々しく開催されている。しかし、映画はそれを正確に記録しようとしない。出演した百余名のうち、画面に登場するのは僅か40名ほど。マイルスもエリントンも、S・ロリンズもカットされているのだ! あくまでも当時気鋭の写真家だった製作・演出のB・スターンの気の向くまま、この祭典を楽しむ人々やバカンスの情景を織り込んで、ジャズそれ自体のエッセンスを的確に掴む離れ技。すべてのプレイに興奮させられるが、特にアニタ・オディの粋で軽快なスキャット、ダイナ・ワシントンのコクのある“オール・オブ・ミー”、そして最後のマヘリア・ジャクソンのゴスペルが白眉である。
<allcinema>

◎恐らく演出のバ−ト・スタ−ンたちスタッフの最初の目論見としては、ジャズ・フェスティバルと同時に開催されたヨットの「アメリカンカップ・レ−ス」の映像をモンタ−ジュして、ちょっと洒落た映画を作ろうとしたのではなかったか。その目論見が覗われるヨットレ−スの映像とまだ盛り上がっていないフェスティバルの映像のモンタ−ジュは、どこか映像的にはギクシャクとしていて、パラパラと空席が目立つステ−ジに立ったアニタ・オディの、乗り難い聴衆を何とか乗らせようとする苦心のほどが直接に見て取れて、“オイオイ、この先どうなるんだ”と観客を余計なことながら心配させたのだった。その杞憂をルイ・ア−ムストロングの“これこそジャズ”といった存在が心を躍らせる音楽と共に打ち払ってくれたのだった。当然その頃にはヨット・レ−スは終わってしまっていたので、サッチモ登場以後はヨット・レ−スの結果を挿入することもなく、夜の深まりとともに、まさにジャスの“祝祭”へとなだれ込んで行く。その祝祭のラストを締めたのは“ゴスペルの女王”マヘリア・ジャクソンの歌声と体格の圧倒的な降臨であった。呑気呆亭