5月13日(火)「生きる歓び」

「生きる歓び」('60・仏)監督・脚本:ルネ・クレマン 脚本:レオ・ベンベヌ−チ/ピエロ・デ・ベルナルディ 撮影:アンリ・ドカエ 音楽:アンジェロ・F・ラバニ−ノ 出演:アラン・ドロン/バルバラ・ラス/ジ−ノ・チェルビ/リナ・モレリ/カルロ・ピザカ−ネ
20年代のローマ。兵役を終えたドロン扮する主人公は働こうにも職がなく、街をうろつき見つけたポスターに飛びつき、何も分からず黒シャツ党に入り、反ファシストアジビラを刷った印刷所を突きとめるように命ぜられる。何軒か探し回った挙げ句、主人公は一目惚れした娘のいる印刷屋に住み込みの助手として居ついてしまう。だが、そここそ目当ての場所、その主人がアナーキストの幹部。なのに、“スペインから将軍暗殺のための殺し屋が侵入した”との噂を耳にした主人公は娘の気を引くため、暗殺者のごとく振舞い、彼に対する一家の態度は急変。案の定、娘も親切に。その時、ローマでは平和博覧会が開催され、警察は要注意人物として一家を留置。ところが、彼らは軽妙に脱獄を企て若い二人を逃がす(この辺がルネ・クレールを想い起こさせる酒脱さで本篇の白眉だろう)。そして、博覧会当日、本物の暗殺者が出現するが…。ドロンの明るい魅力で快調に見せる政治コメディ。<allcinema>

◎危険分子を自認するアナ−キストたちがしっかり警察にリストアップされていて、事あるごとに予防投獄されるという、警察と危険分子たちとのいかにもユルいイタリア的ななれ合いがとても面白く、傑作喜劇を予想したのだった。しかし、この面白さの中に狂言回しとして投げ込まれたアラン・ドロンの役割が、その面白さを増幅せずにかえって混乱させるだけに終わってしまったのが惜しまれる。屋根裏部屋の老アナ−キストなどのキャラクタ−が活かされなかったのは実に残念で、それもこれも、演出と脚本の混乱と、本来コミカルな資質を持たないドロンを起用したキャステイングのミスによるものであろう。呑気呆亭