5月6日(火)「二人の世界」

「二人の世界」('67・日活)監督・脚本:松尾昭典 脚本:小川英 撮影:岩佐一泉 照明:藤林甲 音楽:嵐野英彦 出演:石原裕次郎/浅丘ルリ子/二谷英明/深江章喜/浜村純/大坂志郎
石原裕次郎主演の日活ム−ド・アクション。北条修一(石原)は身に覚えのない罪をきせられ、やむなく国外へ逃亡していたが、あと4日で時効という時になってフィリピン人ヴァルガスと名のって帰国する。彼は帰国の船上で戸川玲子(浅丘)と知り合う。長崎に着くと、北条は玲子に置き手紙をし、汚名を晴らすために真犯人の捜査に乗り出す。玲子は北条の過去に強い興味を抱いて北条を追う。もうひとり、スク−プをものにせんとして雑誌記者・川瀬(二谷)も北条を追跡。だが証人は次々と消されていた。主人公の過去を取り戻し、失われた自己の存在証明を得ようとする姿を、情感をたたえム−ディな雰囲気で描いた佳作。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎石原・浅丘のコンビも賞味期限を過ぎたなというのが率直な感想。裕次郎も太ってしまって一時の精悍さが失われてしまったし、フィリピン人ヴァルガスを装うためにぶっとい葉巻を吹かすのがまるで似合わない。映画的に面白いシ−ンは、北条が雑誌記者・川瀬の眼を躱すために玲子に近づき、ダンスをしながら架空の「二人の世界」を作り上げる時の会話の見事さで、これは脚本の小川英の手柄であろう。もう一つ上げれば、ヤクザの親分の娘玲子を慕う代貸しの小谷を演ずる深江章喜の好演であろうか。どうしても此方を向いてくれない玲子の心を得ようとして苦悩し、組織と玲子への思いに板挟みになって苦しむ男を見事に造形していた。呑気呆亭