4月22日(火)「刑事」

「刑事」('59・伊)監督・脚本:ピエトロ・ジェルミ 原作:C・E・ガッタ 脚本:アルフレ−ド・ジャンネッテイ/エンニオ・デ・コンチ−ニ 撮影:レオニ−ダ・バルボ−ニ 音楽:カルロ・ルスティケリ 出演:ピエトロ・ジェルミ/クラウディア・カルディナ−レ/ニ−ノ・カステルヌオ−ボ/エレオノ−ラ・ロッシ=ドラゴ/フランコ・ファブリッツイ
★ローマ近郊の小都市で主婦が殺害された。事件を追う警部は徐々に真相に迫っていくが、捜査の過程で様々な人間模様が浮かび上がる…。殺人捜査を主軸に、市井の人々の哀愁を描いた名編。同時に、地道な捜査活動を極めて詳細に描写しており、その細やかさの積み重ねが見事な緊迫感を生み出している。<allcinema>

◎♪アモ−レ アモ−レ アモ−レ アモレミ−ヨ♪の名曲は我々昭和世代の耳底に染み込んでいて、ラストシ−ンのカルディナ−レの切ない表情とともに忘れがたい記憶となって定着している。この記憶は「第三の男」のラストシ−ンとともに大袈裟にいえば人類の記憶といってもいいのではないだろうか。そのラストシ−ンの前に、ジェルミたち刑事がカルディナ−レの夫を殺人容疑で捕らえにくるのだが、ここで監督としてのジェルミは印象的な演出をする。恩人である女主人を殺した恋人の罪を知りながら結婚して、夫とともに二人の一生を賭けて罪をつぐなって行こうと決意したカルディナ−レの、いかにもイタリア女らしい激しさと強さに刑事たちは辟易して、犯人の夫を車に押し込むとまるで逃げるように車を発進させる。その車を追って絶叫しながら走るカルディナ−レの姿を、首をすくめる刑事たちの肩越しにキャメラは捉えたのだった。殺された女主人の地位も金もある夫や従兄弟たちの乱倫な生活ぶりを丁寧に描いたのは、貧しく正直な二人がふとした偶然から罪を犯してしまったという不条理を際立たせるためであったのだと、このラストで観客に納得させたのだった。呑気呆亭