4月11日(金)「侍」

「侍」('65・三船プロ東宝)監督:岡本喜八 原作:郡司次郎正 脚本:橋本忍 撮影:村井博 音楽:佐藤勝 出演:三船敏郎/松本幸四郎/小林桂樹/伊藤雄之助/新珠三千代/八千草薫
★郡司次郎正の原作「侍ニッポン」を橋本忍が脚色、岡本喜八の監督で映画化した“幕末”もの。万延元年、時の大老井伊直弼の開国強攻策に反対する水戸浪士が、暗殺を企てる。井伊大老が妾に生ませた子・新納鶴千代は、一攫千金・立身出世の打算から水戸浪士の一味に加わり、実父とは知らぬまま桜田門井伊直弼の首を落とす。雪の降りしきる桜田門での井伊直弼暗殺のシ−ンは、ラグビ−まがいの集団殺陣を、岡本喜八監督十八番のスピ−ディなカッテイングによるアクション処理でこなし、見応え十分である。三船敏郎が、豪快な中にも繊細な神経を潜ませた神納鶴千代を過不足なく演じ、伊藤雄之助のニヒルですごみのきいた浪士の頭目役も絶品。なおこの作品は、三船プロ東宝による第1回提携作品である。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎凄まじい殺陣(三船敏郎=久世竜)を見た。同じ攘夷側の水戸浪士から差し向けられた刺客に囲まれた新納鶴千代(三船)が、前後と右から白刃を突きつけられながら、左手にだらりと提げた大刀に手を伸ばそうとした前の刺客をその鞘で突き、同時に右手で後ざまに抜いた刀で背後の敵を切り、身を沈めながら返す刀で右の敵を切り、突かれた姿勢から立ち直って斬りかかる前の敵を袈裟懸けに切り倒す。一瞬のことで何が起こったか判らず、慌てて巻き戻してコマ落しで見て漸く判明した凄まじい殺陣であった。呑気呆亭