3月19日(水)「熱いトタン屋根の猫」

「熱いトタン屋根の猫」('58・米)監督・脚本:リチャ−ド・ブルックス 原作:テネシ−・ウィリアムズ 脚本:ジェ−ムズ・ポ− 撮影:ウイリアム・ダニエルズ 出演:エリザベス・テイラー/ポ−ル・ニュ−マン/パ−ル・アイブス/ジャック・カ−ソン/ジュディス・アンダ−ソン
アメリカ南部の旧家を舞台にした愛憎の人間ドラマ。ワンマンな当主ビッグ・ダディがガンに冒されていることがわかり、酒浸りの息子ブリック、ヒステリ−気味のその妻マギ−、そして遺産の分け前を貰いにきた兄夫婦らが繰り広げるすさまじい人間模様を描く。(ぴあ・CINEMA CLUB)

アメリカ映画の俳優たちが発する台詞の“Family”という発音には殊更に粘りつくセンチメンタルなモノをいつも感じる。この映画の中で何度も何度も繰り返し発語される“Big Dddy”という言葉にも、ともすれば分裂しかねない人工国家であるアメリカという国の宿痾のようなモノが感じられてならない。テネシ−・ウィリアムズの原作は読んでいないので確かなことは言えないのだが、ここまですさまじい家族間の葛藤を描きながらラストの甘さはどうしたことなのか。兄嫁に配した女優のミスキャスト(類型的に過ぎて気の毒であった)も含めて、監督・脚本のリチャ−ド・ブルックスの才能の限界を露呈した作品であった。呑気呆亭