3月18日(火)「眼には眼を」

「眼には眼を」('58・仏=伊)監督・脚本:アンドレ・カイヤット 原作・脚本:ヴァエ・カッチャ 撮影:クリスチャン・マトラ 音楽:ピエ−ル・ルイギ 出演:クルト・ユルゲンス/フォルコ・ルリ/パスカル・オ−ドレ/レア・パドヴァニ 
★砂漠の国シリアの小都市トラブロスの病院の、仏人医師ヴァルテル(クルト・ユルゲンス)はひょんなことから、一人の男につけ廻され始めた。−−その男の妻の診療を彼が断ったため、病院へ向う途中、車が故障し、男は病妻を連れ、歩いてやっとたどりついた。更に悪いことに、宿直の若い医師が誤診し、手遅れになった。これらの不幸のもとは、みんなヴァルテルにあると、その男−−ボルタク(フォルコ・ルリ)は思っているらしいのだ。深夜の怪電話。尾行。ヴァルテルの不安はつのった。彼が自分の立場を説明しようと、ボルタクを探し求めだすと、今度は逆に相手が逃げ廻る。ヴァルテルは彼を追ってアラビヤ人集落ラヤへ向い、途中、車が故障したボルタク父娘を拾った。ガソリンをきらせて、ラヤに泊った翌朝、ヴァルテルは奥地の村の怪我人の治療を頼まれた。その集落には白人への敵意が満ち満ちており、ヴァルテルは治療を断られた。その間に、彼の車のタイヤがなくなっていた。仕方なく泊った集落の喫茶店で、彼はボルタクに再会した。ボルタクは商用で来たのだという。(goo映画)

◎この映画の初見は多分ア−トシアタ−での事だったと思う。ラストの衝撃がいつまでも心に残っていて、恐らく「眼には眼を」という言葉の意味を我々日本人が知ったのはこの映画によってではなかったか。ところがこの「眼には眼を」という言葉には「歯には歯を」という続きがあって、ボクラ無信心者はこの報復の論理に怖気をふるったものだった。ところが最近になってこのイスラムの言葉には、“他人から美しいモノを受けたら美しいモノを・・・、美味しいモノを受けたら美味しいモノを・・・”という意味があるのだと知って、それこそ「眼からウロコ」が落ちる思いがしたことだった。今回見直して、ボルタク(=イスラム)の憎しみをかったのはヴァルテルの過誤ではなく、その無神経さと腹の底に隠している民衆へのさげすみであったのだと気が付いた。それを象徴するのが、車に乗ったヴァルテルがやたらに鳴らすクラクションの耳障りな音であった。西欧が未だにヴァルテルであれば、遂にボルタク(=イスラム)の心情を理解することは出来ないだろう。呑気呆亭