3月11日(火)「戦争と青春」臨時上映

「c」('91・松竹)監督:今井正 製作:大澤豊/岡村光雄 「戦争と青春」製作委員会 原作・脚本:早乙女勝元 撮影:岡崎宏三 美術:春木章 音楽:佐藤勝 出演:工藤夕貴/佐野圭亮/井川比佐志/奈良岡朋子/樹木希林/河原崎長一郎
早乙女勝元の同名小説を作者本人が脚色し映画化。今井正監督が「ひめゆりの塔」以来9年ぶりにメガホンを取ったが、これが遺作となった。
東京の下町に住む女子高生・ゆかりは、学校の授業で親から戦争体験を聞きレポートにまとめるという宿題を出される。早速、父・勇太に話を聞こうとするが、何故か父の口は重たかった。
そんなある日、勇太の姉(ゆかりから見れば伯母)咲子が飛び出した子供をかばって交通事故に遭う。咲子には戦争で生き別れた娘がおり、町の焼け焦げた電柱のところで離れ離れになっていたため、毎日そこに立って娘を待っていたのだ。事故はそこで起きたものであり、咲子はその際に娘の名前を叫んでいた。これをきっかけに勇太は重い口を開き、ゆかりは父と伯母の壮絶な戦争体験を知る。(Wiki

◎友人から委託されたVHSを臨時上映。その友人はこの映画の製作委員会に関わっていて、当時の資料とポスタ−を保存している。せっかく預かったものだからと、一日遅れではあったがこの日に上映したのだった。当時の空襲を実際に経験した方もいて、その方が言うには“3月10日の空襲という言い方には違和感がある。空襲は9日の深夜に始まったので、我々空襲下を逃げまどった者は3月9日の・・・と言いならわして来た”とのことであった。米軍はこの空襲を実行するにあたって関東大震災の火災の燃え広がり方を研究し、向島に集中的に焼夷弾を投下することで“効果的”に東京の下町を焼き払い10万人の市民を虐殺したのだった。
映画はその空襲下を逃げまどった平凡な一家の悲劇を丁寧に描いて行く。空襲の場面の迫力はCGなどを使っていないので、思わず俳優さんの身を心配してしまうほどのものであった。私財を投じてこの映画制作を前に進めた原作者の早乙女勝元(自宅を抵当に入れたとか)と、残念ながらこれが遺作となった監督・今井正、そして江戸の頃の一揆衆のようにこの映画のスタッフ・キャストを支えるために蝟集した「製作委員会」の面々に敬意を表します。それにしてもこの映画のことがすっかり忘れさられているようなのは(DVDも出ていない)どうしたことなのだろうか?呑気呆亭