3月5日(水)「恋人たち」

「恋人たち」('58・仏)監督・脚本:ルイ・マル 原作:ドミニク・ヴィヴィアン 脚本:ルイ・ド・ヴィルモラン 撮影:アンリ・ドカエ 出演:ジャンヌ・モロ−/アラン・キュニ−/ジャン・マルク・ボリ−/ホセ・ルイ・ド・ビラロンガ
★L・マルの第二作目はデビュー作に続き再びJ・モロー(当時、まさに恋人の間柄だった)を主演に迎えての不倫愛の物語。ブラームスの主題曲が厳かに流れ、濃密なロマンの成熟具合は、その頃の彼の年齢を考えれば、背伸びをしているように思えなくもない熟れ方で、観る者を陶酔に誘う。原作は18世紀の作家バロン・ド・ドノンの“ポワン・ド・ランドン”。古典の優美さを巧みに現代に移し替えるセンスがさすがだ。'54年のフランス=ディジョンが舞台。新聞社主(A・キュニー)の妻ジャンヌは閉塞的な日常からの逃避を月に二度のパリ行きと愛人ラウール(ポロに熱中のつまらない男なのだ)との密会に求めていた。逆に、ラウールたちを屋敷に迎えようと相談に出た帰り、車が故障した所を若い考古学者ベルナールに拾われ家に辿り着いた彼女。友人らを迎えたその晩、眠れずに戸外へ出ると、そこにベルナールの姿もあった。夢遊病者のように庭をさまよい歩き、いつしか二人は、ジャンヌの寝室で愛を交わす。そして翌朝、驚く夫や愛人をしり目に、彼女は新しい男と共に家を出る。心なしか浮かぬ表情で…。モローすなわち倦怠(アンニュイ)。いったい彼女を満足させるものは何なのか不思議に思うほど、いつも不満そうな顔をしているのだ。<allcinema>

◎この映画のジャンヌ・モロ−を高校の頃密かに思っていた彼女に想定して観ていたことを思い出す。おもえばモロ−という衝撃にぶつかったのはこの映画であった。アンニュイなどという高級な感情を理解できる年齢ではなかったが、いつ見てもふくれっ面のモロ−には何か心を揺さぶるモノがあって、その青二才はオンナというものを知ったと錯覚したのだった。呑気呆亭