12月25日(水)「真田風雲録」

「真田風雲録」('63・東映)監督:加藤泰 原作・脚本:福田善之 脚本:小野竜之助/神波史男 撮影:古谷伸 音楽:林光 出演:中村錦之助/渡辺美佐子/河原崎長一郎/ミッキ−・カ−チス/ジェリ−藤尾/富田富士男/米倉斉加年/千秋実
★日本ではジャンルとして成立しなかったミュ−ジカル映画だが、何本かは快作が作られている。マキノ雅弘の「鴛鴦歌合戦」という今ではよく知られた時代劇ミュ−ジカルもあるが、この「真田風雲録」はそのメチャクチャさかげんのおいて「鴛鴦〜」にひけをとらない大爆笑の和製ミュ−ジカル・コメディ。猿飛佐助をはじめとする真田十勇士の破天荒な暴れぶりを、忍術とギャグと歌で綴った痛快きわまりない一編。もとは舞台で上演されていた作品の映画化で、加藤泰は面白いと即座に引き受けて完成。あまりに突飛な出来で興行的には大失敗。紅一点・お霧(霧隠才蔵)を演じる渡辺美佐子が印象的。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎音楽劇の面白さという点では「鴛鴦〜」に劣るが、アナ−キ−なハチャメチャさと痛快さではこの作品に軍配を上げたい。いつものオ−ソドックスな作風とは異なって加藤泰の演出には危ういほどの遊びがある。“列組まねえか?”なんて今となっては恥ずかしくなるほどの台詞に象徴されるように、この映画には'60年安保の闘いの影響が色濃く見受けられる。それだけに今見てみるとややアナクロの感を免れないのだが、多彩なキャラクタ−を愉しむだけでもこの作品は日本映画史に残されて行く価値があると思う。呑気呆亭