12月17日(火)「ミスタア・ロバ−ツ」

「ミスタア・ロバ−ツ」(55・米)監督:ジョン・フォ−ド/マ−ヴィン・ルロイ 原作:ト−マス・ヘッゲン 脚本:フランク・ニュ−ジェント/ジョシュア・ロ−ガン 撮影:ウイントン・C・ホック 音楽:フランツ・ワックスマン 出演:ヘンリ−・フォンダ/ジェ−ムズ・ギャグニ−/ジャック・レモン/ウイリアム・パウエル/ワ−ド・ボンド/ハリ−・ケリ−・Jr
★太平洋戦争中、海軍のオンボロ輸送艦「バケツ号」が舞台。専制的な艦長の下、副長のロバーツ(ヘンリー・フォンダ)はじめ乗組員たちは、戦線に参加できず退屈で艦長のしごきに耐え続ける生活を送っていた。たまたま寄港地でWAVE(女性海軍兵士)たちの着替えを覗きができる場所に停泊する。そのWAVEたちが艦を見学することになり、彼女らに消毒用アルコールを(ウイスキーと偽って)飲ませようとパルバー(ジャック・レモン)は算段する。だがパルバーの不手際により、覗き行為がWAVEたちにばれてしまって全てご破算となる。
次の寄港地に着こうという時、ロバーツは艦長といさかいを起こし、転属願いを出そうとするが、「転属願いを出さず、また今後一切艦長に逆らわない」と言う条件と引き換えに、乗員の一時上陸を許可するよう艦長に詰め寄る。許可する艦長だが、上陸して浮かれた乗組員たちは乱痴気騒ぎを起こし、結局上陸許可は一晩と経たずに取り消される。
以後、艦長の手先となってしまったロバーツに、乗組員たちは反感を向ける。艦に居場所が無くなったロバーツは、腹いせに艦長が唯一愛しているヤシの鉢植えを海に捨ててしまう。深夜に非常呼集をかける艦長。しかしそれを通して乗組員たちは、上陸許可を出させたのがロバーツであったのを知り、そして艦長は転属を許可する。
しばらくして、バルバーほか乗組員宛にロバーツから明るい手紙が届く。だがその手紙には紙片が添えられていた。その紙片には、ロバーツが日本軍の神風攻撃で戦死した旨が書かれていたのだった。(Wiki

◎初見ではパルバ−少尉が仕掛けた爆薬が洗濯室で暴発して、石鹸の泡がまるで生き物のように溢れだして艦内を席捲するというギャグに腹を抱えて笑った。後にフォンダとフォ−ドの諍いのことを聞き、そのことから監督がマ−ヴィン・ルロイに替った顛末などのことも知ったのだが、フォンダとフォ−ドの演出を巡っての確執がどの辺りに有ったかは分からぬが、見直してみるとフォンダよりもギャグニ−やレモンやパウエルの演技の方が好ましく感じた。フォンダはこの作品の原作となった舞台を何年も演じたと聞いているが、フォンダにとって大事だったのはミスタア・ロバ−ツという役柄だったのに、フォ−ドにはロバ−ツを含めた輸送艦の乗組員たちと艦長との対立を喜劇仕立てに描くことが主眼だったのではなかったか。甲板を独り超然としてつっぱらかって歩くミスタアには同僚への愛情も叩き上げの艦長への敬意も見られぬことに苛立って、フォ−ドはロバ−ツを殴ってしまったのではなかったろうか。そうしたアレコレからの救いはラストシ−ンのレモンとギャグニ−の絶妙の間合いでの対決ぶりであった。呑気呆亭