12月9日(月)「ハンナ・ア−レント」於:岩波ホ−ル(番外編)

「ハンナ・ア−レント」('2012)監督・脚本:マルガレ−テ・フォン・トロッタ 脚本:パメラ・カッツ 製作:ベッティナ・ブロケンパ−/ヨハネス・レキシン 撮影:キャロリ−ヌ・シャンプティエ 音楽:アンドレ・マ−ゲンタ−ラ− 出演:バルバラ・スコヴァ/アクセル・ミルベルク/ジャネット・マクティア/ユリア・イェンチ/ウルリッヒ・ノエテン
ホロコーストを生き延びたユダヤ人哲学者ハンナ・アーレント。1960年代初頭、彼女は何百万人ものユダヤ人の収容所移送を指揮したナチスの重要戦犯アドルフ・アイヒマンの裁判に立ち会い、その傍聴記を発表する。しかしアイヒマンを、思考することを放棄して命令に従っただけの凡庸な小役人と評し、さらにユダヤ自治組織の指導者がアイヒマンに協力していたことにも言及したレポート『イェルサレムアイヒマン』は、ユダヤ人社会からの激しいバッシングに晒される。本作は、そんなアーレントの孤高の戦いを通して、その波乱の人生と彼女が訴え続けた信念に迫る伝記ドラマ。主演は「ローザ・ルクセンブルグ」のバルバラ・スコヴァ。監督も同じく「ローザ・ルクセンブルグ」のマルガレーテ・フォン・トロッタ。<allcinema>

◎Oさん
映画・『ハンナ・ア−レント』、強烈な体験でした。しつこく奨めてくれて有難う。ラスト8分のア−レント教授の講義には圧倒されました。夢にうなされるほどに恐れていたナチのアイヒマンが思わず失笑するほどに凡庸な小役人でしかなかったことの認識から、根源的な「悪」などというものはない、「悪は陳腐(凡庸)」であるという認識を得た課程をタバコを片手に語りながら、根源的なのは「善」であるという結論に到る立論は見事なものでした。学生たちの拍手の中、それを聞いていた同僚の男性たちが席を蹴って退席したのは、彼らが自らの根底に潜めている「政治性」に気付かされた故のことであったのでしょう。男という奴は幼児の頃から女性に対しての根拠のない優位性を刷り込まれ続けて来たために、その「政治性」に気付かされるとあのように激昂するもののようです。それにしても監督もスタッフも主演者も女性で固めたこの映画は、陳腐なチンポをぶら下げたやつらの横っ面を小気味よく張ってみせてくれた作品でした。呑気呆亭