12月10日(火)「雪夫人絵図」

「雪夫人絵図」('50・新東宝)監督:溝口健二 原作:舟橋聖一 脚本:舟橋和郎/依田義賢 撮影:小原譲治 美術:水谷浩 音楽:早坂文雄 出演:木暮実千代/上原謙/柳永二郎/浜田百合子/久我美子/山村聡/夏川静江
舟橋聖一の同名小説を「夜の女たち」でコンビを組んだ依田義賢が脚色し溝口健二が監督した文芸エロス。撮影は「一番美しく」の小原譲治、音楽は「羅生門」の早坂文雄が担当した。1975年には佐久間良子主演「雪夫人繪圖」として再映画化された。
華族信濃家の一人娘の雪は婿養子の直之と結婚しているが、直之は京都のキャバレーに勤める愛人の綾子を抱え、放蕩三昧の生活を送っていた。家に出入りする琴の師匠の息子・菊中方哉に想いを寄せる雪だったが、夫に離婚話を切り出す勇気がなく、直之の肉欲に負けてしまうのだった。父が亡くなり財政的に行き詰まってしまったため、雪は熱海で旅館を始めるが、そこへ綾子とヒモの立岡を連れて直之が姿を現した。<allcinema>

◎初見では溝口の演出する木暮実千代の隠微なエロスに参ってしまったのだが、二度目では何度も奇妙な顔を象った帯留めをこれ見よがしに映し出す作為にうんざりしてしまったのだった。おまけに雪夫人が恋する琴の師匠の上原謙のしたり顔が鼻について、やたら裸になる柳永二郎の下品さとともに見るに堪えない思いがしたことだった。登場人物の誰にも感情移入出来ない珍しい作品である。呑気呆亭