11月28日(木)「若き日の次郎長・東海道のつむじ風」

「若き日の次郎長・東海道のつむじ風」('62・東映京都)監督:マキノ雅弘 脚本:小野竜之助 撮影:坪井誠 音楽:鈴木静一 出演:中村錦之助/水島道太郎/ジェリ−・藤尾/渥美清/丘さとみ/千秋実/星美智子
★「若き日の次郎長」シリーズの最終作。前二作と同様、小野竜之助が脚本、マキノ雅弘が監督を務めた。甲府に向かった清水次郎長一家の活躍を描く痛快時代劇。
次郎長は甲府の賭場で人足の権と知り合った。お蝶や大政たちを津向の文吉親分の家に行かせた次郎長は、権が猿屋の勘助にしょっぴかれたことを知る。人足たちにひどい仕打ちをしてきた三馬政蔵親分に手向かおうとして、三馬の親分である勘助に目をつけられたのだ。次郎長は勘助の家から権を取り戻すことに成功するが、勘助は甲府勤番支配の平垣三郎兵衛を味方につけ、次郎長と権、仲間の人足たちを捕らえてしまう。留守を守る大政は清水一家の子分を引き連れ甲府に入り、石松をわざと牢屋に入れさせ連絡役とした。<allcinema>

◎これは不穏な映画である。かつてマキノ雅弘は戦時中にその娯楽性の底に秘められた革命思想によって罪を問われかねない「阿波の踊子」という忘れられた傑作を作ったが、この作品もまた60年アンポの翌年に作られたということから推量すると、権力者に対する民衆の戦いの戦術を描こうとしたのではないかと思われる。次郎長は甲府勤番支配に対して戦いを挑むにあたって、周到に準備を重ね甲府の町衆を味方に引き込んでおいてから行動を起こす。単なるやくざ者に過ぎない次郎長たちが、結局甲府勤番支配を屈服させて無事に清水港へ向かうことが出来たのは、彼らが民衆の支持を背景として正義を行ったからだった。マキノ雅弘は常に敗退する左翼運動を担う連中に、“この次郎長一家の戦い方を見習ったらどうだ”と言いたかったのではないだろうか。呑気呆亭