11月23日(土)「エデンの東」

エデンの東」('55・米)監督:エリア・カザン 原作:ジョン・スタインベック 脚本:ポ−ル・オズボ−ン 撮影:テッド・マッコ−ド 音楽:レナ−ド・ロ−ゼンマン 出演:ジェ−ムズ・ディ−ン/ジュリ−・ハリス/レイモンド・マッセ−/ジョ−・バン・フリ−ト/リチャ−ド・タヴァロス/ロイス・スミス
★名匠カザンがシネマスコープをドラマ表現において見事に使いこなしたことや、J・ディーンのあるがままの“演技”、L・ローゼンマンによる忘れらない主題曲……。秀作の要素が嫌味なくらいに揃った、しかし、やるせない宿命に喘ぐ青春を描いて、これほどの達成はなかろう。原作は言わずと知れた旧約聖書カインとアベルを下敷きにしたスタインベックの長篇で、映画はその一部を元にしただけだが、小説のエッセンスが全て凝縮されている。温厚な兄だけが父に可愛がられ、冷たくされる自分の出生に疑問を持った、大農場を経営するトラスクー一家の問題児キャルは、彼らを捨てて出奔した母(凄みのある名演J・V・フリート=オスカー助演賞)の行方を突きとめ、予想に反する答えを聞く…。そして、涙なしには観られない結末も素晴らしい。兄の婚約者で次第にキャルに魅かれてゆくエイブラに扮するJ・ハリスの母なる包容力も印象的だ。しかし、それにしてもジミー・ディーンである。
<allcinema>

◎作家ノ−マン・メイラ−が人間を「ヒップスタ−」と「スクエア」に分けて論じた文章があったと記憶しているが、恐らくメイラ−のその文章はジェ−ムズ・ディ−ンという存在によって触発されたのではないだろうか?それほどにこの作品のディ−ンの存在感は際立っている。笑い方、歩き方、走り方、眉の顰め方、凍える身体にセ−タ−の腕を巻き付けて耐えるやり方、突発的に兄貴を殴りつけるやり方、何からなにまでこのキャルはヒップな奴なのである。ところでヒップスタ−とは何者なのか、そしてこの特異な性格のヒップスタ−が何故にアメリカ映画にしか登場しないのか?ジェ−ムズ・ディ−ン、ポ−ル・ニュ−マン、マ−ロン・ブランド、ETC.。そうそう、慌てて付け加えれば、ディーンと母親役のジョ−・バン・フリ−トとが顔を見合わせて話すシ−ン、この二人何と宿命的に似ていることかと、今回見直してみて発見したことだった。呑気呆亭