11月12日(火)「危(ヤバ)いことなら銭になる」

「危(ヤバ)いことなら銭になる」('62・日活)監督:中平康 原作:都筑道夫 脚本:池田一朗/山崎忠昭 撮影:姫田真佐久 照明:岩木保夫 美術:大鶴泰弘 音楽:伊部晴美 出演:宍戸錠/長門祐之/草薙幸二郎/浅丘ルリ子/左卜全/武智豊子
★紙幣を印刷するスカシ入り和紙十億八千万円相当が強奪された。ガラスのジョー(宍戸錠)、計算尺の哲(長門裕之)、ブル健(草薙幸二郎)は、犯人グループがニセ札作りの名人坂本老人(左ト全)を必要とすると睨み、坂本老人を囲い込もうとするが・・・。

クライム・ストーリーでありながら、真の悪人が殆ど出てこないコメディタッチ。脚本の山崎忠昭は、後にアニメの『ルパン三世』にも関わっているらしいが、その萌芽がそこここに感じられるように思う。宍戸、長門、草薙に、柔道二段合気道三段という浅丘ルリ子というのは、まさにルパン一味と同じ構図(役割は違うが)。また、共同脚本の池田一朗は、後の時代劇作家隆慶一郎ということで、不思議な世界が展開する。
いってみれば猥雑なスピード感とでもいえば良いか・・・。何とも評し難い面白みとカッコ良さが共存しているのだ。
52歳で世を去った中平康が36歳の時の作品。
冒頭の主題歌がまた不思議な感じなのだが、何とこの作詞が谷川俊太郎。とにかく猥雑な感じが何といえない魅力の作品なのだ。
<allcinema=黒美君彦>

◎紙幣が舞うタイトルバックが楽しい。そして登場人物たちが皆一癖有ってマンガチックな所もワクワクさせる。その期待に違わず宍戸も長門も草薙も浅丘も軽いノリで演じて飽きさせない。何より傑作なのがニセ札作り名人の左卜全とその口やかましい女房役の武智豊子である。この二人がどんな状況に陥っても危機を感ぜず、まるで台風の目のように周囲の騒ぎから乖離していることが、物語の可笑しさを増幅させる。柔道二段合気道三段の触れ込みの浅丘ルリ子が役を愉しげに演じていて好感が持てる。中平康以下のスタッフの腕を見せた快作である。呑気呆亭