11月2日(土)「続・座頭市物語」

「続・座頭市物語」('62・大映)監督:森一生 原作:子母澤寛 脚本:犬塚稔 撮影:本多省三 音楽:斎藤一郎 出演:勝新太郎/水谷良重/万里昌代/城健三朗/中村豊/沢村宗之助
★市がまだ盲目になる前に、ひとりの女をめぐって争った実兄・与四郎が、凶状持ちの浪人となって市の前に現れる・・・。市の実兄の浪人役を勝新太郎の実兄である城健三朗(現・若山富三郎)が好演。

◎この第2作で市の過去が明らかになるのだが、いささか説明的に過ぎて白ける部分がある。市の実兄との葛藤を実の実兄である城健三郎(若山富三郎)に演じさせるという演出はややあざとくて、感情移入するのが難しい。特に気になるのが市の仕込み杖の行方である。これは前作で平手造酒の遺体と一緒に葬ったはずであるのに、冒頭で登場する市の手にはその仕込み杖がある。兄の与四郎と争った時に跳ね上げられて飛んだ仕込み杖は何処に行ったのか。確かにラストで市は助五郎を彼の刀で切るのだが、さてそれから市は何を頼りにして街道を行くのか。与四郎と一緒に川に飛び込んだメクラの市がどうやって兄を助けて逃れることが出来たのか。数々の疑問がある。しかし、この作品での唯一の収穫は、水谷良重のキャラクタ−であった。同じ勝新太郎と共演した「悪名」ではなよなよと弱いだけの女・琴糸を演じて頂けなかったのだが、市と与四郎の争いの種となったお千代そっくりの女お節を演じて、市に惚れ一夜を共にした衣ぎぬの朝の爽やかな色気と台詞が好い。一夜の明け、市は河原で顔を洗っている。その背後にしどけなく歩んだお節が、“なんだか自分のカラダじゃないみたい”というエロキュ−ションの色っぽさ。そっけなく市は“お疲れさま”と返すのだが、これは勝新一流の照れ。そのあとの場面の市とお節のおままごとが微笑ましい。この作品唯一のほのぼのとしたシ−ンでありました。呑気呆亭