10月31日(木)「忍びの者」

「忍びの者」('62・大映)監督:山本薩夫 原作:村山知義 脚本:高岩肇 撮影:竹村康和 出演:市川雷蔵/伊藤雄之助/藤村志保/城健三朗/小林勝彦/西村晃/岸田今日子
★大泥棒として有名な石川五右衛門を、権力に反逆した下忍として描いた村山知義の同名小説の映画化。監督は社会派の巨匠・山本薩夫があたり、リアルで豪快なアクションと権力の道具として生きるしかない下忍の反逆の叫びを描き出し、時代劇映画に新たな地平を切り拓いた。戦国末期、全国制覇の野望に燃える織田信長延暦寺石山本願寺など宗門の掃討にとりかかる。伊賀の国、百地三太夫配下の下忍・石川五右衛門は抜群の技術を誇り、仲間から一目置かれる存在だ。天台、真言修験僧の流れを汲む忍者たちは信長暗殺の密命を受けるが、なぜか五右衛門だけは残されてしまう・・・。三太夫役の伊藤雄之助が迫力ある怪演。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎リアルな忍者ものとしてヒットした映画だが、伊藤雄之助百地三太夫=藤林長門守という拮抗する勢力の頭領として設定した無理がたたって、素直に見ることの出来ない作品になってしまったのは惜しい。もちろん伊藤は熱演なのだが、これはいかにも無理がある。市川・五右衛門の活躍もどこか白けてしまって、リアルな忍者の世界の描き方がかえってえ嘘っぽく見えてしまったのだった。呑気呆亭