10月30日(水)「若い人」

「若い人」('62・日活)監督:西川克己 原作:石坂洋次郎 脚本:三木克己 撮影:萩原憲治 照明:藤林甲 音楽:池田正義 出演:石原裕次郎/浅丘ルリ子/吉永小百合/大坂志郎/三浦光子/北村和夫
石坂洋次郎の原作を石原裕次郎浅丘ルリ子吉永小百合の三大スタ−共演で映画化した青春ドラマ。特殊な生活環境からひねくれた育ち方をした思春期の少女の多感な心理を描く。原作は今度が3度目の映画化で、前2作では原作どおりに北国を舞台にしているが、ここでは南国に舞台が移っている。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎この映画は江波恵子を演じた吉永小百合のものである。若い血のたぎる身体を放り出すように裕次郎にぶつけてゆく演技には強烈な色気が有り、さすがの浅丘ルリ子もたじたじといった態である。しかしその吉永以上に凄いのは恵子の母のハツを演じた三浦光子であった。自堕落で抜け目なくゾットするほどの色気があって、娘の彼氏だろうと構わず誘惑しかねない、そのくせどこか憎めない女、女という複雑怪奇な存在を見事に演じて見せてくれた。日本映画の後にも先にもこれほどの「女」を造形した女優さんはなかったのではなかろうか。そのハツの情夫を演じた北村和夫裕次郎を圧倒する存在感も、これが新劇の俳優さんかよというくらいのふてぶてしさであった。この情夫を含めて母娘の葛藤をつぶさに知るスケベ医者の大坂志郎も軽妙な存在感を発揮して、結局この映画は裕チャン・ルリ子のモノではなく、この四人のものとなってしまったのである。呑気呆亭