10月29日(火)「憎いあんちくしょう」

「憎いあんちくしょう」('62・日活)監督:蔵原惟繕 脚本:山田信夫 撮影:間宮義雄 照明:藤林甲 美術:鈴木晄 音楽:黛敏郎 出演:石原裕次郎/浅丘ルリ子/芦川いづみ/長門祐之/川地民夫小池朝雄
★マスコミに生き、愛が形骸化した男女が、ふとしたきっかけで日本縦断の旅に出ることになり、愛を取り戻すという物語を、全国ロケ−ションで綴る作品。マスコミに生きる男女を描く一方、無医村で働く医師と遠く東京に離れて暮らす恋人の純愛を設定し、二組の愛を互いに照射させながら物語は展開していく。蔵原惟繕監督のスピ−ディで歯切れのいいカッテイングやカメラワ−クも冴え、時にスクリ−ン・プロセスを使ったラブシ−ンの処理もあざやか。北大作(石原)はマスコミの売れっ子だ。彼にはマネ−ジャ−兼恋人の榊典子(浅丘)がいるが、このところ多忙からふたりの仲は倦怠気味。そこへジ−プを九州まで運ぶという仕事が舞い込んでくる。九州で働く恋人のために、美子(芦川)が新聞広告を出したのだった。大作はこの話に共感して、その運転手を買って出る。一方マスコミもこのニュ−スを聞きつけ、ジ−プを運転する大作のあとを追っかけまわす。典子はあわてて大作を連れ戻そうとするが・・・。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎照明が名手藤林甲ということで期待したが、石原裕次郎浅丘ルリ子のぶっ飛んだ演技も含めて、映像も演出も素晴らしい日活ロ−ド・ム−ビ−の快作に仕上がっている。プロロ−グのカッテイングも快調で見る者の胸にこれから何が起こるんだろうという期待を抱かせる。照明師とキャメラマンの技量がこれでもかというかのように発揮されたのは、母衣なしのジャガ−で雨の中を走り回って、大作の住居兼仕事場に濡れ鼠で引き上げてからの室内のシ−クエンスであった。下着だけとなった典子(浅丘)が大作(裕次郎)のでかいYシャツだけを身に纏って現れた姿には清潔な色気があって、その浅丘の魅力を引き立てるために藤林と間宮は狂気したかのようにあるったけの技量で渡り合っている。呑気呆亭