10月23日(水)「波止場」

「波止場」('54・米)監督:エリア・カザン 原作・脚本:バッド・シュルバ−グ 撮影:ボリス・カウフマン 音楽:レナ−ド・バ−ンスタイン 出演:マ−ロン・ブランド/エヴァ・マリ−・セイント/リ−・J・コッブ/ロッド・スタイガ−/カ−ル・マルデン/パット・ヘニング
★カザンのセミ・ドキメンタリ−・タッチの力強い演出とブランドの清新な演技で、アカデミ−賞8部門を受賞した'54年を代表する話題作。ボクサ−くずれの与太者テリ−は自分の兄チャ−リ−が沖仲仕を牛耳る親分ジョニ−の指示で仲間を殺すのを目撃、その妹イディが悲しむ姿に動かされる。ジョニ−は口止めといやがらせを続けるが、チャ−リ−が殺されるに及んで、テリ−は法廷に証言に立ち、イディには愛をうちあけた。仲間のボイコットにもめげずに、テリ−は単身先頭に立ち、仲間を目覚めさせる。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎イディとの出会いが箸にも棒にも掛からない与太者のテリ−を徐々に変貌させてゆく課程がカザンによって丁寧に描かれている。イディは兄の死の真相を突き止めようとしてテリ−に近づくのだが、やがて彼を愛するようになるとテリ−を失う恐れから日和り始め、ふたりでこんな町を出て暮らそうと言いだす。そのイディの変化と反比例するように意識を目覚めさせてゆくテリ−の変貌は、遂にその表情にインテリジェンスを滲み出させるに到る。その難しい変貌の課程をマ−ロン・ブランドが見事に演じて、その才能の大いさを感じさせたのであった。呑気呆亭