10月12日(土)「第十七捕虜収容所」

第十七捕虜収容所」('53・米)製作・監督・脚本:ビリ−・ワイルダ−脚本:エドウィン・ブラム 撮影:ア−ネスト・ラズロ 音楽:フランツ・ワックスマン 出演:ウイリアム・ホ−ルデン/ドン・テイラ−/オット−・プレミンジャ−
★ブロードウェイでヒットした舞台劇を基に、B・ワイルダーとE・ブラムが脚色、ワイルダーが製作・監督した異色の戦争ドラマ。舞台は第二次大戦中のドイツの第17捕虜収容所。その第4キャンプでは米空軍の軍曹ばかりが集められていたが、中でも曲者なのが悲観論者のセフトン(ホールデン。アカデミー主演男優賞受賞)。キャンプ内に独軍に通じるスパイがいると囁かれた時に、彼は真っ先に嫌疑をかけられ、仲間から次第に除け者にされていった。孤立状態の中で、セフトンはひとり黙々とスパイ探しを続けるのだが…。捕虜収容所を舞台にした映画は数あれど、その展開の妙味と、娯楽色において本作と肩を並べられる作品はあるまい。前半のコミカル路線から、後半のリアル路線への橋渡しもスムーズで、サスペンス醸造も巧みだ。相変わらずのワイルダーの語り口の上手さを堪能すべし。<allcinema>

◎例え捕虜になって収容所に入れられても、絶え間なく抵抗を続けることがレジスタンスであるということが欧米の兵士たちには徹底されているということを聞いた。我が日本兵に戦陣訓によって叩き込まれたのは“「生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず、死して罪禍(ざいか)の汚名を残すこと勿(なか)れ”という玉砕精神だった。その精神主義と対照的なのがこの映画の捕虜たちであった。その中でも異色な存在がホ−ルデン演ずるセフトンである。同室の捕虜たちが熱い気持ちでレジスタンスを試みるのを尻目に、セフトンはせっせと収容所内の商売に励む。その抜け目ないク−ルさが同僚に憎まれてスパイ容疑を掛けられる。その複雑な性格のキャラクタ−を演じたワイルダ−作品二作目であるウイリアム・ホ−ルデンの演技が凄い。この作品で得たアカデミ−主演男優賞は彼にとって勲章となりス−パ−・スタ−への階梯を昇り始めたのだった。呑気呆亭