10月11日(金)「シェ−ン」

「シェ−ン」(53・米)監督:ジョ−ジ・スティ−ブンス 原作:ジャック・シェ−ファ− 撮影:ロイヤル・グリックス 音楽:ヴィクタ−・ヤング 出演:アラン・ラッド/ヴァン・ヘフリン/ジ−ン・ア−サ−/ブランドン・デ・ワイルド/エミ−ル・メイヤ−/ジャック・パランス/ベン・ジョンソン
ヴィスタビジョンの画面いっぱいにワイオミングの大草原が広がる。主題曲「遙かなる山の呼び声」が流れるなか、画面の手前に馬上の男が現れ谷間を下りていく。やがて、馬と人は眼下の草原に豆粒のように見えはじめる。見事な俯瞰撮影で幕を開ける「シェ−ン」は、巨匠スティ−ブンスがシェ−ファ−の原作を得て作り上げた本格的西部劇だ。西部の新天地では、土地をめぐって開拓農民と牧畜業者との対立が絶えなかった。北へ行く途中ジョ−(ヘフリン)一家に立ち寄ったシエ−ンは、世話を受け味方につく。ある日、酒場で敵対するライカ−(メイヤ−)一家にからまれたシェ−ンは、黙って引き下がるが、2度目は徹底的にぶちのめす。復讐のためライカ−は、名うての殺し屋ウイルソン(パランス)を呼び寄せるが・・・。典型的な西部劇のパタ−ンを踏襲しながら、この作品がすぐれて西部劇史上に残る名編となったのは、すべての対象を自然主義ともいえる徹底したリアリズム手法で私情豊にうたい上げた点と、少年の目に映るヒ−ロ−=シェ−ンを描いた点にある。ラッド一世一代の名演。殺し屋ジャック・パランスのすご味も忘れがたい。(ぴあ・CINEMA CLUB)

淀長さんの話で、一ヵ所遠景に車が走っているカットが有ると聞いたのだが、今回も発見できなかった。何度も見ているとやはりアラが見えてくる。酒場での殴り合いでどちらかといえば小柄なシェ−ンが荒くれ者たちを叩きのめすのはどう見ても無理だし、シェ−ンの拳銃の使い方が常に左掌で撃鉄を叩くファニングであることが気に入らない。シングルアクションの銃は引き金を引くだけで発射できるダブルアクションとは違って、撃鉄を利手の親指で起こしながら抜いて同時に引き金を引くことで、銃身のブレを少なくして射撃の精度を上げるのだが、ファニングでは銃身が揺れるので「荒野の決闘」でワ−ド・ボンドがやった至近距離での射撃にしか使わないものである。農家の女にしてはジ−ン・ア−サ−は化粧が濃くて綺麗すぎる。それに比べてヴァン・ヘフリンは適役だが、ライカ−との戦いでまるで戦略がないのが農民側の指導者としては頼りない。次に何かあったらシェ−ン(多分死んで)はいないのだ。結局一番格好良くて存在感に嘘がなかったのは、酒を飲まず珈琲ばかり飲んでいる黒ずくめの殺し屋ジャック・パランスであった。彼がシェ−ンに負けるなんてウソだぁい。呑気呆亭