10月8日(火)「過去をもつ愛情」

「過去をもつ愛情」(54・仏)監督:アンリ・ヴェルヌイユ 原作:ジョセフ・ケッセル 脚本:ジャック・コンパネ−ズ 撮影:ロジェ・ユベ−ル 音楽:ミシェル・ルグラン 出演:フランソワ−ズ・アルヌ−ル/ダニエル・ジュラン/トレバ−・ハワ−ド/アマリア・ロドリゲス
ポルトガルリスボンで出会った男と女。だが、ピエ−ルには妻殺しの、カスリ−ンには夫殺しの暗い過去があった。アマリア・ロゴリゲスの唄うファド「暗いはしけ」がふたりの恋の悲しい運命を暗示する。罪を背負った男女の哀しい運命を描いたメロドラマ。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎フランソワ−ズ・アルヌ−ルは元々演技派ではなく、その肉体の存在感で勝負する女優であるからして、暗い過去を持つ女の演技を求めるのは酷であろう。ダニエル・ジュランも不倫の妻を殺してその軍歴ゆえに無罪となってリスボンまで流れて来たにしては軽い存在感で、二人の悲劇を盛り上げるのはアマリア・ロドリゲスの唄ばかり。この唄がなかったらアルヌ−ルの顔を見る楽しみのみの映画になってしまっただろう。この過去をもつ男と女と追う刑事という設定をパクッて製作した日活映画「帰らざる波止場」と比べてみると、アルヌ−ルと浅丘ルリ子の演技力の差とジュランと裕次郎の主役を張る役者の存在感の差が作品の出来を左右したように思われる。刑事役のハワ−ドと志村喬は甲乙付け難い演技であった。呑気呆亭