10月4日(金)「用心棒」

「用心棒」('61・東宝=黒澤プロ)監督・脚本:黒澤明 製作・脚本:菊島隆三 撮影:宮川一夫 照明:石井長四郎 美術:村木与四郎 音楽:佐藤勝 出演:三船敏郎/仲代達矢/山田五十鈴/志村喬/東野英治郎/加藤大介/藤原釜足/河津清三郎/太刀川寛
★やくざと元締めが対立するさびれた宿場町。そこへ一人の浪人者がやってくる。立ち寄った居酒屋のあるじに、早くこの町を出ていった方がいいと言われるが、その男は自分を用心棒として売り込み始める。やがて男をめぐって、二つの勢力は対立を深めていく…。ハメットの『血の収穫』を大胆に翻案、時代劇に西部劇の要素を取り込んだ娯楽活劇。後にマカロニウェスタン「荒野の用心棒」としてパクられた逸話はあまりにも有名である。桑畑三十郎が名前を変えて活躍する姉妹篇「椿三十郎」も製作されている。<allcinema>

◎監督・脚本・撮影・照明・美術・音楽以下のスタッフ連中が、まるで妍を競うかのように面白がってこの映画作りに参加したことが見て取れる。その面白がり方のベクトルが仕合わせにも一つの方向を向いたためにこの傑作を生んだのだろう。もちろん三船敏郎以下の役者さんたちという素材の質の高さあってのことでもあるのだが。何度も見てきて今回発見したのは、三十郎への対応をめぐって清兵衛(河津)おりん(山田)与一郎(太刀川)が顔を寄せてひそひそ話(三十郎や女郎たちに聴かれている)をしているカットだった。カメラを据え付けての顔・顔・顔のドアップの映像なのだが、ギラギラする欲と思惑と怯えが渦巻いて据え付けでありながら何ともダイナミックな映像であった。
映像と音楽と役者の芸を幕開けから終幕まで隅から隅まで舐めるように味わいながら大いに笑って愉しめる快作である。呑気呆亭