10月3日(木)「悪名」

「悪名」('61・大映京都)監督:田中徳三 原作:今東光 脚本:依田義賢 撮影:宮川一夫 音楽:伊福部昭 出演:勝新太郎/田宮二郎/中村玉緒/中田康子/水谷良重/浪花千栄子
今東光の同名小説をもとに、依田義賢が脚色し田中徳三が監督した任侠もの。勝新太郎田宮二郎のコンビによる本作がヒットしたのを受けてシリーズ化され、全十六作品が製作された。
無類の暴れん坊として知られる朝吉は、人妻のお千代と温泉へ駆け落ちするが、お千代のヒモの生活に飽きてしまい一人で大阪に帰ってきてしまった。幼なじみたちと再会した朝吉は遊郭へ出かけ、琴糸に惚れてしまう。酔った幼なじみが遊郭からの帰りにモートルの貞という男とトラブルを起こしたため、翌日、朝吉たちと貞が対決することになった。貞はその土地で暴れん坊として恐れられる男だったが、朝吉にこてんぱんにやられてしまう。そして貞は徐々に朝吉とともに行動するようになっていくのだった。<allcinema>

◎シリ−ズの第一作ということで、興味は朝吉(勝)とモートルの貞(田宮)の出会いに絞られる。大阪遊郭で遊ぶ朝吉たちの前に現れたモートルの貞は実にカッコ好いべらんめえでまくし立て、朝吉との喧嘩も力一杯正々堂々の一騎打ち。負け方さえもカッコ好い。親分に愛想を尽かした貞が朝吉に親分子分の盃を貰おうとして、“わしゃ、ヤクザが嫌いだ”と言われて“何だと”気色ばみ、ニコッと笑った朝吉に“兄弟でええやないか”と言われてぐにゃぐにゃとなる場面の可笑しさといったらない。田宮二郎という役者の優れた才能がこのシ−ンに凝集されている。それを絵にした田中徳三宮川一夫の腕と、人たらしの朝吉を演じた勝新太郎という役者のすごさを思い知らされたのだった。その二人を巡る女たちがそれぞれに個性的な存在感を見せて見事だった。呑気呆亭