10月2日(水)「海峡、血に染めて」

海峡、血に染めて」('61・日活)監督・鈴木清順 原作:大村隆弘 脚本:棚田吾郎 撮影:峰重義 美術:中村公彦 音楽:大森盛太郎 出演:和田浩治/葉山良二/清水まゆみ/英百合子/久松洪介/郷硏冶/浜田寅彦/山岡久乃/藤村有弘
★現職海上保安官の体験談をもとにした痛快海洋アクション。和田浩治のアクションもこの頃になると、さすがにサマになって来た。鈴木清順も彼の成長に合せて、初期のコミック・アクションから、この作品のような本格的アクションに、徐々に取り組むようになった。(ぴあ・CINEMA CLUB)

海上保安官の体験談をもとにした話だということで、恐らく隠岐の島でロケしたものか、韓国との国境線を巡っての密輸団と海上保安官たちとの争いにリアリティがある。韓国からの密航を斡旋するボスを演ずる山岡久乃は、岡本喜八の「独立愚連隊」でも見せてくれたが、韓国のオモニを実に達者に演ずる役者さんである。芸達者で廻りを囲まれた和田浩治も若者らしく溌溂と新米保安官を演じて好感が持てた。監督の鈴木清順も後期のやや独りよがりな演出スタイルではなく、オ−ソドックスな演出で海洋アクションを面白く見せてくれた。昨今の国境を巡る情勢を思うと、再上映が望まれる貴重な映画である。呑気呆亭