9月25日(水)「終着駅」

「終着駅」('53・米=伊)監督:ビットリオ・デ・シ−カ 脚本:チェ−ザレ・ザバッテ−ニ 撮影:G・R・アルド 出演:ジェニファ−・ジョ−ンズ/モンゴメリ−・クリフト/リチャ−ド・ベイマ−
★ネオレアリズモを代表するデ・シーカ組の才能に目をつけたセルズニックがロンドンフィルムと提携、「逢びき」に匹敵するメロドラマを作ろうと、M・クリフトとJ・ジョーンズを擁して作りあげた恋愛映画。物語の進行と上映時間が一致した実験的な側面も持つ。夫と子をアメリカに残しローマにやってきた一人の女性が、そこで恋に落ちたイタリア青年の懇願を振り切って去って行くまでを、“終着駅”に集う様々な人の人生を点描しながら物語る。クリフト、ジョーンズとも彼らのベストの演技。淡々とした映像が昂まってラストの哀切は筆舌に尽し難いほど。<allcinema>

◎駅という交々の人生が交錯する空間と、その交々の人生を乗せて発進して行く列車のタイムテ−ブルに象徴される時間とが、撚り合わされることで生ずるサスペンスを見事に破綻なく映像化したデ・シ−カの力量に驚く。その切迫した時間と空間の中で激しく揺れ動く感情をまるでドキメントを見るかのように哀切に表現したジェニファ−・ジョ−ンズの演技は奇跡的であるとしか言いようがない。クリフトもこうした役柄にはうってつけで、男にせよ女にせよ、若き日の「恋」を回想する者にとっては、この映画はフィクションであることを超えて胸に迫るものがあったのではなかろうか。呑気呆亭