9月26日(木)「ロ−マの休日」

「ロ−マの休日」('53・米)製作・監督:ウイリアム・ワイラ− 脚本:アイアン・マクラレン・ハンタ−/他 撮影:フランツ・プラナ−/アンリ・アルカン 出演:オ−ドリ−・ヘプバ−ン/グレゴリ−・ペック/エディ・アルバ−ト
★ローマを舞台に某小国の王女と新聞記者とのロマンチックで切ない恋の夢物語……と書くのもおこがましいほど、あまりにも有名な“世紀の妖精”オードリーのアメリカ映画デビュー作。ローマの観光地巡り的な平凡な作品に成りかねない内容をここまで素晴らしい作品に仕上げたワイラー監督の演出力には文句のつけようもないが、何と言っても最大のポイントはオードリーの上品で可憐で清楚で……と、上げればきりがないほどの魅力の全てをフィルムに焼き付けた事に尽きる。とにかく必見のアカデミー主演女優賞、衣装デザイン<白黒>賞、脚本<原案>賞受賞作。尚、赤狩りの犠牲になったダルトン・トランボがイアン・マクレラン・ハンター名義で脚本を担当していたことが1993年に公表された。2003年9月、「製作50周年記念デジタル・ニューマスター版」が劇場公開された。その際にはダルトン・トランボが本名でクレジットされている。無謀にも「新・ローマの休日」と言うリメイク作品がある。<allcinema>

◎観客にとってこの映画の見どころは、至る所に歴史的建造物があるロ−マの町並みと、そこに暮らす人々のゆったりとした生活ぶりと、そしてその素敵な景色の中をスク−タ−に乗って駆け巡る一組の男女が、互いについている小さな嘘を乗り越えていつ恋に落ちるのだろうとワクワクしながら待ち受ける愉しみだろう。偶然出会った娘が王女だと知ってこれを特ダネにしようとする新聞記者ジョ−と、身分を隠して束の間の自由を存分に楽しもうとするアン王女とは、互いに小さな嘘を抱えている。そのことの隔てがライオンの口でのエピソ−ドで壊されて心が通い合う。そして船上でのダンスパ−ティで親しさが増し、黒服のガ−ドマンたちとの乱闘と水中へのダイブ。濡れ鼠になって目を見合わした二人はこの瞬間に恋に落ちたのだった。ラストの落ちも効いていて、後味の良いお伽噺であった。新聞記者の友人のカメラマンを演じたエディ・アルバ−トの好演も旨味を加えるスパイスになっていた。呑気呆亭