9月19日(木)「宮本武蔵・二刀流開眼」

宮本武蔵・二刀流開眼」('63・東映京都)監督:内田吐夢 原作:吉川英治 脚本:鈴木尚之 撮影:吉田貞次 音楽:小杉太一郎 出演:中村錦之助/木村功/入江若葉/丘さとみ/浪花千栄子/高倉健/薄田研二
中村錦之助主演によるシリーズ五部作の第三部で、柳生の庄での戦いから人生最大のライバル佐々木小次郎の登場までが描かれる。
 般若坂で浪人たちを斬った宮本武蔵は、剣聖と呼ばれる柳生石舟斎宗厳と剣を交えようとするが実現しなかった。どうにか柳生四高弟と知り合いになるが、城太郎が柳生家の愛犬を殺したことから高弟たちと対立。その際、袖口を斬られた武蔵は思わず小刀を手に持ち、図らずも二刀流の構えを見せる。吉岡道場の当主である清十郎は、長剣を携えた謎の剣士・佐々木小次郎と出会い道場に招いた。対決を決意した清十郎による高札を見上げる武蔵の目には、柳の木に寄りかかりこちらを見つめる小次郎の姿が映っていた…。<allcinema>

◎柳生の高弟との立ち会いで右袖口を切られ、とっさに左手で小刀を抜いて対処したことから、この第三部を内田吐夢は「二刀流開眼」と名付けた。とっさにとは、相手の剣風が右腕を襲ったと同時にということで、武蔵は右腕を切り落とされたと感じ、瞬間左で剣を抜いたのだったろう。これを「開眼」というのはいかがなものか。それよりこの第三部の見どころは、石舟斎が切った芍薬の茎の切り口に、それを贈られた伝七郎は何の異状も見ず、たまたまそれを手に入れた武蔵が己の技を比べんとして切った芍薬の茎を返された柳生の高弟たちが、やはりその違いを判定出来なかったという所にある。よくある達人伝説の一つだが、石舟斎は自ら持った芍薬を中空で切ったのに比べて、武蔵は宿の小女に両手で持たせた茎の中頃を切ったという所に、花を生けるということを知らぬ武蔵の素養が石舟斎に劣ったということだった。そこに目を止めれば、これを「芍薬の巻」とでも名付けたいものだ。呑気呆亭