9月12日(木)「オ−ル・ザ・キングスメン」

「オ−ル・ザ・キングスメン=ALL THE KING'S MEN」('49・米)監督・脚本:ロバ−ト・ロッセン 原作:ロバ−ト・ペン・ウオ−レン 撮影:バ−ネット・ガフイ出演:ブロドリック・クロフォ−ド/ジョン・アイアランド/アン・シ−モア/ジョ−ン・ドル−/マ−セデス・マッケンブリッジ
★やがて赤狩りの犠牲になり屈辱的な転向を強いられる事になるロッセンが自ら脚本を書き製作した、政治腐敗のからくりを暴露する問題作。政界浄化を唱え知事選にうって出た小役人が、二度の落選で理想主義を地にまみれさせ、俗物に堕ちて行く様を、初めは彼に共感し取材を始めた記者(J・アイアランド)の視点から描く。やがて、汚い手口で知事になった役人は、彼に反対する人達を力で封じ込める独裁者になっていた。大変な愛妻家でもあった彼だが、やがて平気で妻を裏切る様になり、献身的に務める秘書をまで毒牙に掛けようとする……。元来、政治まで娯楽になるお国柄だが、ロッセンは持前のハードな語り口で畳み掛け、息もつかせず一気に魅せる。作品賞はもちろん、主演のクロフォードの他、秘書に扮したM・マッケンブリッジもオスカーに輝いた。
<allcinema>

◎ジョ−ン・ドル−が出演しているということでDVDを手に入れて視聴。前半のクロフォ−ドとアイアランドが絡んでの政界裏話的な展開には一気に引き込まれたが、知事に当選して権力を手に入れたクロフォ−ドが変貌してゆく課程の描写が俳優の演技に頼っただけのずさんなものなので、こんなものかと一気に引いてしまった。これは脚本の失敗だったのではないか。クロフォ−ドが知事になって公約通りに建設した病院に絡んでの悪事をもっと丁寧に描くべきだったのではないだろうか。「悪に強い者は善にも強い」という諺を是非このクロフォ−ドに造形してみて欲しかった。ドル−も今一の活躍であったこともあり、残念な作品である。蛇足だが、同じような題材を扱ったウォ−レン・ビ−ティ監督・脚本・製作・主演の快作「ブルワ−ス」の面白さを思い出してしまったのだった。呑気呆亭