9月4日(木)「雨月物語」

雨月物語」('53・大映京都)監督:溝口健二 原作:上田秋成 脚本:川口松太郎/依田義賢 撮影:宮川一夫 音楽:早川文雄 美術:伊藤熹朔 時代考証:甲斐荘楠音 出演:田中絹代/森雅之/水戸光子/小沢栄/京マチ子/青山杉作/羅門光三郎/香川良介/上田吉二郎/毛利菊枝
★1953年度のヴェネチア国際映画祭で、監督の溝口健二がサン・マルコ銀獅子賞に輝いた作品。小津安二郎監督の「東京物語」と共に、日本映画を代表する作品と称されている。戦国時代、貧しい陶工(森)は妻子(田中)を捨て、美しい女(京)と暮らし始めるが、その女の正体は?女の正体に気づき、家に逃げ帰ってみると家には眠っている子供と妻が居たが、その妻は・・・。一方、出世欲から侍になろうとした男(小沢)は、女郎に身を落とした妻(水戸)に出会い、自分の愚かさを悟って、妻と共に郷里に帰り、幸せに暮らします。(DVDの解説)

◎今となって見れば物語の出来を云々するよりは、丹念に戦国時代らしきものを再現した美術と時代考証の仕事を顕彰しなければなるまい。撮影の宮川一夫は坦々とした筆致で物語を綴ってゆく。溝口の演出は考えてみれば異様な怨霊物語を破綻なく定着してゆく。我々はその仕事に驚嘆しつつ琵琶湖に浮かぶ船のように霧の中をあてどなく彷徨って、ふと、この世に自分が生きていることを見出して驚くのである。呑気呆亭