9月29日(木)「ボ−ジェスト」

「ボ−ジェスト=BEAU GESTE」('52・米)監督:ウイリアム・A・ウエルマン 原作:パ−シヴァル・クリストファ−レン 脚本:ロバ−ト・カ−ソン 撮影:セオドア・スパ−クル/ア−チ−・スタウト 音楽:アルフレッド・ニュ−マン 出演:ゲイリ−・ク−パ−/レイ・ミランド/ロバ−ト・プレストン/ス−ザン・ヘイワ−ド/ブライアン・ドンレヴィ
★英国のP・C・レンの小説を映画化した、いかにも魅惑的な波瀾万丈の物語。孤児のジェスト三兄弟は、彼らを養子に迎え愛情を注いでくれた叔母の経済的危急を知り、最後に残された宝石“青い水”を守り抜くため、無断で持ち出して外人部隊に加わった。長男ボー(クーパー)を中心に堅い兄弟愛に結ばれた彼らは、戦場で獅子奮迅の活躍を見せるが、結局、末弟ジョンだけが生還し、“青い水”を逝った兄たちの手紙と共に叔母に返す。監督ウエルマンは、胸躍る冒険の予感を叙情的に綴るプロローグの美しい展開(幼少の3兄弟と従妹がともに遊ぶ場面から現在への時間経過の、今の映画では考えられない流麗な運び)から、偉大な娯楽活劇の作り手であると同時に、自覚しているかどうかはともあれ、詩的なストーリー・テラーである一面ものぞかせ、これぞ30年代アメリカ映画という、バランスの取れたヴォリュームを作品に持たせている。<allcinema>

◎アフリカの砂漠の中の砦、一見各部署に銃を構えていると見えた隊員がすべて死んでいたというプロロ−グの設定が面白い。その砦に最初に偵察に入ったラッパ手がどうしたことか失踪し、生存者がいないはずの兵舎から火の手が上がる。まるで幽霊船に乗り込まされたかのような謎が、イギリスの或る家庭の物語の回想から徐々に明らかにされる。謎のキ−ワ−ドは“Blue Water”。と、ここらくらいまでは快調なのだが、ジェスト兄弟の長兄ボ−がその宝石“Blue Water”を奪って失踪するところから物語がご都合主義になって行く。彼が奪ったのは本物の“Blue Water”だったのか、育ててくれた叔母の対面を保つための勇気ある行動(ボ−ジェスト)だったのか?盗むためにはあの状況では共犯者がいなければならないが、それは誰だったのか。等々が曖昧なままに外人部隊に三人のジェスト兄弟が揃っているシ−ンに飛躍してしまうのだ。そしてそこには物語にとってお誂え向きの悪軍曹ブライアン・ドンレヴィが居たりしては、これはもう悪軍曹と戦う外人部隊の制服を着た格好いいク−パ−たちを見せんがための謎・謎・謎の仕掛けでしかなかったのではないかとガッカリさせられてしまったのだった。呑気呆亭