8月2日(金)「反逆児」

「反逆児」('60・東映)監督・脚本:伊藤大輔 原作:大佛次郎 撮影:坪井誠 音楽:伊福部昭 出演:中村錦之助/岩崎加根子/杉村春子/佐野周二/桜町弘子/月形龍之介
大佛次郎市川團十郎菊五郎劇団のために書いた戯曲『築山殿始末』を「切られ与三郎」の伊藤大輔が脚本・監督した時代劇。撮影は「江戸っ子繁昌記」の坪井誠、音楽は「釈迦」の伊福部昭がそれぞれ担当した。中村錦之助が悲劇の武将・徳川信康を熱演。
 徳川家康の第一子である信康は、戦で名を上げ、織田信長の娘である徳姫を妻に迎えた。だが実の母である築山御前が、かつて信長に滅ぼされた今川義元の娘だったことから、嫁姑の不仲に心を休めることもできずにいた。母は織田家を滅ぼすため、武田方に情報を売ろうとまでしていた。信康は花売りの娘しのと一度だけ情を交わすが、そのことを知った母は今川家再興のため、しのを侍女として城に迎え入れるのだった。
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錦之助という役者は裕次郎と二人で映画界にスタ−とはこういう存在なんだよと身をもって示した人であった。若き日の裕次郎はどんな役柄を演じても常に“裕チャン”であり、そのぶっきらぼうな台詞まわしと歩き方がフアンに愛された。錦之助は初期に演じた、笛吹童子一心太助清水の次郎長織田信長など底抜けに明るくエネルギッシュな若者像によってそれまでの時代劇にはなかったスタ−性を日本映画にもたらしたのであった。この作品でも錦之助は見事な舞の技を披露したり、母への想いと妻への愛情の間で引き裂かれる天才武将信康の悲劇をその全身を叩き付けるような演技で具現化する。その信康の妻徳姫を演じた岩崎加根子は、錦之助と築山御前を演じた杉村春子の「動」に対してすさまじい「静」の演技で対抗して見事であった。呑気呆亭