7月30日(火)「女は二度生まれる」

「女は二度生まれる」('60・東宝)監督・脚本:川島雄三 原作:富田常雄 脚本:井手俊郎 撮影:村井博 音楽:池野成 美術:井上章
富田常雄の小説『小えん日記』を、川島雄三井手俊郎とともに脚色し監督。大映での初監督作品であり、川島の最高傑作の一つに挙げられる。川島が大映首脳陣を前に「若尾文子を女にしてみせる」と宣言したといわれる。
芸者の小えんは男相手の商売を続ける毎日を送っていた。そんな彼女は、銭湯への行き帰りに出会う大学生の牧にときめいていた。矢島という遊び人と箱根へ行った帰り、小えんは初めて牧と話をするが、彼は大学を出て他の場所へ行ってしまうと言う。売春がばれて置屋が営業停止となってしまったため、小えんは銀座のバーで勤めることに。芸者時代に出会った筒井と再会し、小えんは彼の愛人になった。しかし筒井は病気で倒れ、そのまま亡くなってしまう。
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若尾文子演ずる小えんは、男に誘われると断れないという寛大無尽な性格を持つ。彼女にとって金銭は問題ではなく、まるで菩薩がその恩恵を衆生に施すように、男たちにその全てを惜しみなく与えるのである。こんな女を演じて自然なのは女優多しといえどもこの若尾文子さんという人以外にないだろう。芸者になってもバ−の女給になっても彼女は周囲の色に染まることなくあっけらかんと若尾文子(小えん)なのである。その天下無敵の彼女がただ一度傷付く。ひそかに想いを寄せていた大学生・牧が社会人となって目の前に現れ、彼女をモノとして取引相手に斡旋しようとしたことで、小えんは牧のために失望し“死んじゃおか・・・”とふと思う。上高地に行くことが夢だと語る貧乏工員「坊や」を誘って小えんは山に向かう。上高地へのバスの切符売り場で若尾文子はふっと心を翻して坊やのための切符だけを買い、その切符と金を渡して上高地へ送り出す。“あんなケチな男のために坊やを道連れには出来ないものねえ・・・”と内心に呟きながら。呑気呆亭