7月25日(木)「家庭日記」 臨時休業日「清水宏特集」

「家庭日記」('38・松竹)監督:清水宏 原作:吉屋信子 脚色:池田忠雄 撮影:斎藤正夫/厚田雄春 音楽:伊藤宣二 出演:佐分利信/高杉早苗/上原謙/桑野通子/三宅邦子
★貧乏学生の生方(佐分利)は学業を続けるために恋人紀久枝(三宅)と別れて生方家に婿入りする。親友で裕福な医者の息子の辻(上原)はバ−の女卯女(桑野)に結婚を迫られて、生方の忠告を押し切って満州へ駆け落ちする。学業を終え医師となった生方は、結婚した品子(高杉)と幸福な家庭を営んでいた。一方、満州で卯女との間に子を成した辻は息子の健康のために帰国し、生方に貸家の斡旋を頼んでその近所に移り住む。良家の育ちの品子には奔放でその夫を平然と“意気地なし”と罵ったりする卯女の存在は驚きであった。家に引きこもりがちの良妻であった品子は卯女に誘われて映画を観に行ったり、卯女の満州時代の知り合いの紀久枝の経営する美容院で、それと知らずに髪をセットしてもらうようになる。生方はかつての恋人紀久枝のことを卯女から聞き、何か出来ることはないかと彼女の銀座進出を手助けする。卯女はそのことを品子に明かさぬことを取引の材料として、辻の撮影スタジオを同じビルの中に開設出来るように協力してくれと持ちかける。生方は辻のことも思ってその申し出でを快諾するが、品子に紀久枝とのことがバレてしまったり、辻をその父親と和解させようとして口利きしたことから、息子を取られてしまったと思い込んだ卯女が家出をしたりと、相次いで騒動が持ち上がり・・・。

◎桑野通子を見たいがための「清水宏特集」通いなのだったが、この作の桑野(卯女)はバ−の女給という設定で、自堕落にタバコを吹かしながら亭主の辻(上原)を“この意気地なし!”と罵ったりして、もうそれだけで嬉しくなってしまったのだった。辻の親友の生方(佐分利)はそんな卯女との結婚に当初反対したのだったが、親に背いても卯女への想いを貫こうとする辻の生き方を認め、その後も影に日向に二人の生活をバックアップする。一方で自分は学業を続けるために富家へ養子に入ることに決め、恋人紀久枝(三宅)と話し合って別離を決め、二人で交わした恋文を別れの場で共に焼いたりもする。この合理性と温かな人間性を併せ持ったキャラクタ−を佐分利はいかにも佐分利らしく木訥に造形して見事であった。呑気呆亭