7月24日(水)「黄昏」

「黄昏=CARRIE」('51・米)監督:ウイリアム・ワイラ− 原作:セオドア・ドライザ− 脚本:ル−ス・ゲ−ツ/オ−ガスタ・ゲ−ツ 撮影:ビクタ−・ミルナ− 出演:ジェニファ−・ジョ−ンズ/ロ−レンス・オリヴィエ/ミリアム・ホプキンス/エディ・アルバ−ト
★19世紀末、田舎からシカゴへ働きに出た娘キャリ−を、一流料理店の支配人ハ−ストウッドが見そめた。しかし、ハ−ストウッドは強欲な妻の尻に敷かれ、離婚もままならない。そこでハ−ストウッドは店の金を盗みキャリ−とともにニュ−ヨ−クに駆け落ちするが・・・。ワイラ−が監督した悲恋ドラマの秀作。坂道を石が転がるように、堕ちていくハ−ストウッドを、名優オリビエが好演。可憐な娘キャリ−に扮するのは「慕情」で知られるジェニファ−・ジョ−ンズ。

◎原題はキャリ−。そのキャリ−を姉の住んでいるシカゴに送り出すにあたって両親が買い与える列車の切符は片道切符だった。その列車の中で知り合った男にキャリ−はその服装の都会的センスを褒められるのだが、場面は一転して縫製工場で働くキャリ−の姿を捉えて、このシカゴ行が憧れの都会への旅立ちなぞではなく、実は口減らしのためであったのだろうと想像させる。19世紀末のアメリカにはこんな厳しい現実が存在したのであろう。一方で、そのキャリ−が運命の人ハ−ストウッドと出会うきっかけとなった一流料理店の場面では、英国流の男尊女卑と身分制度が田舎娘の出現に眉をひそめる上流階級気取りの連中によって象徴される。その貧富の大きな格差という設定が、貧の象徴であるキャリ−と富の象徴であるハ−ストウッドの出会いと恋を彩り、ラストのパラドクシカルな逆転を哀れにも意味深いモノにしたのである。呑気呆亭