7月9日(火)「遊星よりの物体X」

遊星よりの物体X」('51・米)製作:ハワ−ド・ホ−クス 監督:クリスチャン・ナイビ− 脚本:チャ−ルズ・レデラ− 撮影:ラッセル・ハ−ラン 出演:マ−ガレット・シェリダン/ケネス・トビ−/ジェ−ムズ・ア−ネス
★北極に不時着した円盤の墜落現場から回収した宇宙人の死体は、北極基地の中でやがて融けだし、基地の人々を襲いはじめる。人類よりも知力、腕力にすぐれ、動物の血を吸い、種子によって繁殖する宇宙人との戦いがはじまる・・・。製作者のホ−クスが新人スタッフで作り上げた、SF映画の幕開けを告げる傑作。'82年にジョン・カ−ペンタ−によりリメイクされた。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎現代のSFXを駆使したハリウッド製の映画を見慣れた人にはいかにもチャチな造りのサイエンス・フィクションである。宇宙人なるモノも円盤を作るほどの科学力が有るにしては攻撃がフランケンシュタインめいて単調で、基地の連中の反撃も素朴なものでおやおやといった感じなのだが、宇宙人が植物人間であるという設定に意外性があって面白く、その宇宙人が自分の種を培養して仲間を増やそうとする仕掛けが素朴なだけに妙な恐怖感が発生する。この妙な恐怖感は我々人類という哺乳類の持つ生物観が、動き回る植物人間という存在によって根底からひっくり返されたことから来るのではないだろうか。食虫植物などの数少ない例外はあるが、基本的に植物とは大地に根ざして大地から栄養分を吸収する生物であって、動き回ったり血を吸ったりしてはいけないのである。そういった我々の既成概念を打ち壊したことで、この映画には歴史的な価値があると言えるだろう。呑気呆亭