7月6日(土)「秋日和」

秋日和」('59・松竹)監督・脚本:小津安二郎 脚本:野田高梧 撮影:厚田雄春 音楽:斎藤高順 出演:原節子/司葉子/岡田茉利子/佐田啓二/笠智衆/佐分利信/桑野みゆき/三上真一郎/沢村貞子
小津安二郎作品の家庭劇では娘役として欠かせない存在であった女優・原節子が母親役にまわった、小津晩年近くの傑作。夫を失ったばかりの秋子(原)は、亡夫の友人たちに再婚をすすめられる。彼女にはその気はないが、まだ美しい未亡人である母親が再婚するのではないかと、娘のアヤ子(司)は気が気でない。母親の気持ちを誤解した娘は反抗しはじめる。やがてふたりは和解し、いつの日か嫁いでゆく娘をつれて秋子はささやかなふたりきりの旅行に出かける・・・。亡夫の友人を演じた佐分利信、北竜二、中村伸郎のとぼけたやりとりがおかしく、岡田茉利子の初々しさも印象深いが、何より母娘旅行のシ−ンの優しさが心にしみる。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎小津さんのカラ−映画でのクレジット画面の趣味の悪さ(人名に脈絡もなく赤字を入れる)には毎度辟易するのだが、この映画では亡夫の友人を演じた佐分利信、北竜二、中村伸郎の会話の品のなさに辟易した。自分たちは社会的にも地位の有る立場に居り、住居も立派な一戸建てに住みながら、粗末なアパ−ト住まいである親友の未亡人を居酒屋談義のタネにするなど、心ある大人のすることではあるまい。彼らの自宅での妻を召使いの如く扱う態度も不快であった。そんな下品なやつらの好奇の目に晒される原さんが気の毒でならなかった。後味の悪い映画である。呑気呆亭