7月5日(金)「次郎長遊侠伝・秋葉の火祭り」

「次郎長遊侠伝・秋葉の火祭り」('55・日活)監督:マキノ雅弘 脚本:八木保太郎/毛利三四郎 撮影:横山実 照明:藤林甲 美術:小池一美 音楽:松井八郎 出演:河津清三郎/三島耕/本郷秀雄/森繁久彌/田中春男/北原三枝
秋葉権現の秋の大祭火祭りに、信州追分の油屋の番頭三五郎は主人の代参として燈籠を献納する為、許婚のお峰、老番頭元三を連れて出発した。附近の大親分黒駒の勝蔵は子分の助十と、その妹でやくざ気どりの馬子のお美代に命じて三五郎一行をだまし、元三を殺して燈籠と燈明料を奪わせた。お峰は通り合せた次郎長こと清水港の長五郎に助けられ、三五郎は河原に倒れているのを旅廻りの一座お時に救われた。宿についたお峰は勝蔵に攫われたが、次郎長にめぐり合った三五郎は協力して彼女を救い出そうとする。

◎これはマキノ雅弘東宝で作った「次郎長三国志」シリ−ズの続編ではない。次郎長(河津)はまだ子分なしの旅鴉である。演出・マキノ雅弘、脚本・八木保太郎/毛利三四郎(八木orマキノの別名?)、撮影・横山実、照明・藤林甲、美術・小池一美、とくればどんな絵を見せてくれるだろうと期待が高まる。その期待はまず、拐かされた娘を救うために単身黒駒の勝蔵の宴席に殴り込む宵のシ−ンで叶えられる。なんとチャンチャンバラバラで火花が飛ぶのである。これはマキノが「浪人街」で見せてくれた嬉しくなるような殺陣の再現であった。そして最大の見ものは題名にも予告されている「秋葉の火祭り」の古式ゆかしい神事のシ−ンであった。この神事が本当のものかどうかを云々する学はワタクシにはないが、深夜の神前で弓取り・剣舞・松明の踊りを奉納するシ−ンはいかにもそれらしくて見事であった。物語はこの誘拐事件をきっかけとして、次郎長と馬子のお美代との出会いと別れ、後の次郎長一家の中核を成す石松(森繁)法印(田中)以下の連中との“生まれたときは別々でも、死ぬときァ一緒”の一家結成に繫がって行く。呑気呆亭