6月26日(水)「イヴの総て」

イヴの総て」('50・米)監督・脚本:ジョゼフ・L・マンキ−ウイッツ 撮影:ミルトン・クラスナ− 音楽:アルフレッド・ニュ−マン 出演:ベティ・デイヴィス/アン・バクスタ−/ジョ−ジ・サンダ−ス/マリリン・モンロ−
★ある日、新進女優イヴ・ハリントンはアメリカ演劇界の栄えある賞に輝いた。だが、彼女がここまで上り詰めるには、一部の関係者たちしか知り得ない紆余曲折の経緯があった。8ヶ月前、田舎からニューヨークへ出てきたイヴは、ひょんなことから憧れの舞台女優マーゴの住み込み秘書となった。するとイヴはこれを皮切りに、劇作家や有名批評家に巧く取り入り、マーゴまでも踏み台にしてスター女優へのし上がっていく…。
監督マンキウィッツ自身による見事な脚本と、名優たちの火花散らす熱演とが融合し、その年のアカデミー賞をほぼ独占する形となった、バックステージものの最高作。田舎からニューヨークへ出、大女優(B・デイヴィス)の付き人となったのを皮切りに、有名批評家に取り入って大女優の代役から一躍、ブロードウェイの寵児にのし上がるヒロインを、A・バクスターがまさに一世一代の体当たり芝居で演じきる。批評家のG・サンダースも、いつになく繊細な役柄を的確に表現し、オスカー助演賞を得た。まだ無名の頃のモンローが顔を出している。
<allcinema>

◎話はこの年の最優秀俳優賞の授賞式の模様から始まる。その受賞者・女優イヴの誕生にまつわる秘話を語ろうとのナレ−ションがその映像に被さってゆく。そのナレ−タ−こそ芸能界の裏も表も、従って女優イヴの光も影も知り尽くしている大物批評家のアディソン(ジョ−ジ・サンダ−ス)だった。アディソンを利用してスタ−女優にのし上がったイヴが、彼を見限って劇作家に乗り換えようとしたときにアディソンはイヴを脅して“お前はオレのものだ”と言う。反発するイヴにアディソンは“お前は殺し屋だ、そしてオレも同じ殺し屋だ”と言うのだった。
この二人の関係が面白い。アディソンは決して世間と和解できぬメフィストとしての自分の反転鏡像をイヴに見たのだ。そしてその自分の分身が友人たちの家庭や愛をその分泌する毒素で破壊するのを防ぐために、この可愛い殺し屋イヴを己の懐に囲い込んでしまおうとしたのではなかったろうか?“お前はオレのものだ・・・” 呑気呆亭