6月25日(火)「孤独な場所で」

「孤独な場所で」('50・米)監督:ニコラス・レイ 原作:ドロシ−・B・ヒュ−ズ 脚本:アンドリュ−・ソルト 撮影:バ−ネット・ガフイ 音楽:ジョ−ジ・アンセイル 出演:ハンフリー・ボガート/グロリア・グレアム/ア−ト・スミス/マ−サ・スチュワ−ト
★本来は、当時も流行していたシリアル・キラーを描くサイコ・サスペンスとしての企画だったものを、主演のボガートらとの熱い即興リハーサルのうちに、レイが脚本をまったく書き改めてしまった異色の恋愛映画作。ハリウッドの高級クラブのホステスが殺され、その嫌疑が脚本家ディックスにかけられた。だが、向かいに住む女優の卵ローレルが彼の無実を証明、これをきっかけに二人は親しくなる。献身的な愛に支えられ、脚本に没頭するディックスだったが、筆が進むにつれ暴力の衝動が頭をもたげてきた。ローレルは深く愛しながらも、彼に疑惑の念を抱くのだが……。自身の分身とも言える苦悩に満ちた天才肌のキャラクターを造形、愛の破局を描く内容に伴うかのように妻であったグレアムとの関係も終わりを迎える、という自伝的要素の濃いいわくつきの作品。製作はボガートの独立プロ、サンタナ・プロダクションで、これはその第2作。一作目の「暗黒への転落」もレイ演出で、この希代の大スターの彼に寄せる並々ならぬ期待と傑出したセンス、挑戦的姿勢がそこからも伺える。<allcinema>

◎“ずっと探していた、名前も住所も顔も知らない女性を、殺人事件のお陰で君に出会った、そして今は名前も住所も顔も分かった・・・”と言ってディックスはロ−レルにキスをする。なんともニクイ台詞である。結ばれた幸せな二人がバ−で聴く歌。ピアノを弾きながら唄っているのはビリ−・ホリディか?
♪あなたに会うまで私は独りぼっち、あなたに会うまで寂しかった。眠れない夜に私はよく考えた、きっといるはずだと、この広い世界のどこかに、私にふさわしい人が。今、会えたわ、私の愛をあなたにささげます、あなたに会うまで取っておいた愛を。私の寂しい心がそう命じるの。愛の天使が心を射抜いた。あなたに会うまで私は独りぼっち・・・♪
“何か欲しいものはないか”と訊くディックスの耳元に口をよせてグロリア・グレアムはささやく“欲しいものは、あなただけよ”と。

このグロリア・グレアムという女優さんが誰かに似ているなと考えていて、あァ、彼女は我が桑野通子に顔も雰囲気もそっくりなんだと思い当たった。呑気呆亭