6月15日(土)「サンセット大通り」

サンセット大通り」('50・米)製作・脚本:チャ−ルズ・ブラケット 監督・脚本:ビリ−・ワイルダ− 脚本:D・M・マ−シュマンJr 撮影:ジョン・F・サイツ 出演:グロリア・スワンソン/ウイリアム・ホ−ルデン/エリック・フォン・シュトロハイム/ナンシ−・オルソン
★ある日、借金取りに追われていた売れない脚本家のジョーは、サンセット大通りに建つ一軒の寂れた邸宅に逃げ込む。そこは、サイレント映画時代の伝説的女優ノーマ・デズモンドの住まいだった。そして、かつての栄光を取り戻すべく銀幕への復帰を目指す彼女は、ジョーに主演作品の脚本を住み込みで執筆させることに。寝食にありつけるとあってこの依頼を引き受けたジョー。しかし、仕事はおろか私生活まで束縛され、ノーマへの不満が募っていく。やがて、ノーマが未だ復帰の機会を得られない中、同じ脚本畑のベティに癒しを求めていくジョーだったが…。
豪邸で隠遁生活を送るサイレント映画時代の伝説的女優と、彼女が自身のために書いたシナリオの修正をまかされた売れない脚本家。ジゴロ気取りで邸宅での日々を過ごしていた脚本家が、仕事だけでなく私生活すら束縛される事に怒りを感じ始めた時、物語は悲劇を迎える。過去の栄光だけを糧として生きる忘れられたスター、ノーマ・デスモンドや彼女の召使、脚本家と恋に落ちる女性などの人物設定を始めとして、オスカーに輝いた脚本の構成は素晴らしく、ハリウッドの光と影をB・ワイルダーが見事に活写した傑作。ノーマに扮したG・スワンソンのラスト・シーンに向けて次第にテンションの上がって行く鬼気迫る芝居も凄い。<allcinema>

◎スワンソンによればこの映画の撮影は物語の進行通りに撮られたのだという。当初カメラテストなるものに激怒したスワンソンだったが、ジョ−ジ・キュ−カ−の忠告を入れてこの役を演じることにした。
【ミス・スワンソンは「とっても楽しい撮影だった」と回想する。「セットには愛情と興奮があった。照明、電気、道具方、末端のスタッフまで、みんな気を張っていた。撮影していてとても楽しかったので、撮影終了になったときには泣いてしまった。もう一度最初から同じようにやれたらこんな幸せなことはないのにと思ったの。覚えている? ステッキと山高帽で私がチャップリンの真似をする素敵なシ−ン。それでね、翌日の朝、私がセットに入ってゆくと、出演者、スタッフ、チンパンジ−の死体まで全員が山高帽をかぶっているじゃない!チンパンジ−は小さな縫いぐるみなんだけど、ちゃんとミニチュアの山高帽をかぶっているの。私の人生で、いちばん嬉しい贈り物だったわ」(『ビリ−・ワイルダ− イン ハリウッド』モ−リス・ゾロトウ著)】
こうしてスワンソンは永遠に映画史に残る俳優となり、そして、モンゴメリー・クリフトの降板により、偶然このギリス役を得たホ−ルデンもまた、B級俳優から超A級の俳優へのステップをこの作品を足がかりとして昇り始めたのである。
個人的に忘れがたいのは、マックス(シュトロハイム)がオルガンでバッハを弾くシ−ンの白手袋と、ラスト・シ−ンのデスモンドを見つめるマックス=シュトロハイム=俳優=演出家の眼差しに込められた愛・賛嘆・諦念・惜別・悔恨・憤り等々、交々の想いの見事な表出であった。呑気呆亭