6月14日(金)「死の谷」

死の谷」('49・米)監督:ラォ−ル・ウオルシュ 原作・脚本:ジョン・トゥイスト/エドマン・H・ノ−ス 撮影:シド・シコックス 音楽:デビッド・バトルフ 出演:ジョエル・マクリ−/ヴァ−ジニア・メイヨ/ドロシ−・マロ−ン/ヘンリ−・ハル
★ ウォルシュが自身のヒット作「ハイ・シエラ」を西部劇に仕立て直した傑作ウェスタン。荒々しい活劇はそのままに、脱獄囚で最後の大仕事に加わろうという主人公(J・マクリー)の哀切、彼をめぐる女たちの醸す情感……と、ウォルシュはいつになく感傷を前面に出している。こんなにV・メイヨがヒロインとして際だつのは珍しいし、密かに慕われるD・マローンのまだ楚々とした美しさも佳い。ラスト、朽ちかけた教会で、運命に呪われた二人のため厳かな挙式を司って見せたのも、ウォルシュの感傷か?<allcinema>

◎インディアンとの混血で炊事馬車の下で産まれたというコロラド(V・メイヨ)は、初めて殴らない男ウエス・マックイ−ン(J・マクリ−)に出会う。髪を洗っていて人の気配を感じ顔を上げた先に、その男ウエスが立っていた。観客はその髪を振り上げたコロラドの鮮烈な美貌を、ウエスと驚きを共有して見下ろすこととなる。演出のウオルシュの心憎い仕掛けである。運命はこの二人に次々に不吉な前兆と試練を与えて、クライマックスに壮大な死の谷の舞台と悲劇的な死を用意する。そのすべてはコロラドが生まれその母の墓のあるこの不毛な土地、コロラド・テリトリー(原題)で起こったことだった。
蛇足を加えれば、ジョエル・マクリ−はいつも通り変わらずジョエル・マクリ−であったのだが、その馬を操る手練には感心させられたのだった。呑気呆亭