5月23日(木)「風速40米」

風速40米」('58・日活)監督:蔵原惟繕 原作・脚本:松浦健郎 撮影:松山実 照明:藤林甲 音楽:佐藤勝 出演:石原裕次郎/北原三枝/宇野重吉/川地民夫/小高雄二/渡辺美佐子/金子信雄
★雑誌「平凡」に連載されていた松浦健郎の原作を、石原裕次郎北原三枝のコンビで映画化したアクション大作。北大建築学科の学生・滝颯夫は小さな建設会社の工事部長の任にある父親が、競争相手の大会社に買収され、工事を遅らせていることを知る。しかし父親は、自分が単に利用されているだけだと悟り、颯夫とともに突貫工事でビルを完成させる。蔵原惟繕監督の才気がまったく感じられない凡庸な作品だが、クライマックスの工事中のビルに、風速40米の台風が襲ってくるシ−ンは迫力十分で「鷲と鷹」('57)の暴風雨シ−ンに続き日活特撮陣が再び技術の冴えをみせる。(ぴあ・CINEMA CLUB)

◎モノクロの映像が美しかった初期の日活アクション映画も、総天然色になると映像に冴えがなくなってしまう。総天然色では名照明技師藤林甲も腕の振るいようがないのだろう。出演者達にも緊張感がなく、類型的な役柄をそれなりに演じてよしとしているようだ。その中にあって唯一存在感を見せるのが渡辺美佐子である。巴里帰りのシャンソン歌手として陰影のある唄いぶりを披露したり、美しい肩甲骨を惜しげもなく見せてくれたりして、蔵原監督も彼女を映す映像だけにはゴ−ジャスな配慮を見せている。怪しいなァ・・・。呑気呆亭