5月22日(水)「明日は明日の風が吹く」

明日は明日の風が吹く」('58・日活)監督・脚本:井上梅次 脚本:松浦健郎/池田一朗 撮影:岩佐一泉 照明:藤林甲 音楽:大森盛太郎 出演:石原裕次郎/北原三枝/金子信雄/高野由美/青山恭二/浅丘ルリ子/浜村美智子/大坂志郎/植村謙二郎/田端義男/二本柳寛
石原裕次郎が、今は亡きヤクザの組長の次男に扮し、ふとしたことからヤクザの世界に足を踏み入れてゆくさまを描くアクション映画。'58年といえば、裕次郎はデビュ−して3年、乗りに乗っている時期で、北原三枝を相手役に迎え、気っぷのいい青年を好演。(ぴあ・CINEMA CLUB)

金子信雄が彼にしては珍しい、一家の長男として心ならずも跡目を継がなければならなかった実直な男という役柄を演じている。弟二人をヤクザの世界から遠ざけるために、自らは泥を被るという典型的な長男のタイプを造形して見事である。その息子達を見守る母親役の高野由美さんも好演。脚本が良く出来ているので登場人物達がみな粒だっていて、出演者の名前を全部記して置きたい気持ちにさせられる。悪役の二本柳寛さえも東映ヤクザ映画の悪役の類型性を免れて、養女の浅丘を悲しませることを恐れる父親という、人間的な面を表現してくれている。大坂志郎と植村謙二郎の時代遅れの侠客像も好ましく、金子信雄の善良性を見抜いて彼に寄り添う、一見バンプ風の浜村美智子も良くて、東映ヤクザ風の血まみれのラストを避けた終幕の知恵も「明日は明日の風が吹く」という明朗な題名を裏切らぬものであった。呑気呆亭