5月21日(火)「独立愚連隊」

「独立愚連隊」('59・東宝)監督・脚本:岡本喜八 撮影:逢沢譲 音楽:佐藤勝 出演:佐藤允/中谷一郎/雪村いづみ/鶴田浩二/中丸忠雄/上原美佐/江原達治
★ 岡本喜八が助監督時代に書いた脚本を自ら監督し映画化。「戦争映画+西部劇」という、まったく新しいジャンルを切り拓いた。映画はヒットし、翌年には続編の「独立愚連隊西へ」が製作された。
第二次世界大戦末期の北支戦線。クズ兵士ばかりを集め危険な任務に当たらせる“独立愚連隊”と呼ばれる部隊に、従軍記者の荒木がやってくる。交戦中に中国人慰安婦と心中したという、見習士官のことを調べに来たという。実は荒木の正体は大久保元軍曹であり、彼こそ見習士官の実の兄であり、弟の死の真相を知るため戦地に赴いたのだった。死んだ慰安婦の妹から紙片を渡された大久保は、弟が上官の不正を部隊長に告発しようとして、その上官から逆に殺されたことを知る。<allcinema>

◎この映画は何度見ても面白い。助監督時代にマキノ雅弘に付いて「次郎長三国志」に関わったことが大きな経験になったのではないだろうか。以来、映画は面白くなければ、というのが岡本喜八の一貫した態度であったと思う。脚本には主演の佐藤允としたたかな軍曹役の中谷一郎の駆け引きが良く描けていて、愚連隊の江原達治以下の雑多な脇役たちの性格も類型的にならずに書き込まれており、さすがに助監督時代から温めて来た本だけのことはある。何度見ても面白いということは、物語の流れに破綻がないということであり、それが観た後の気持ち良さとなる。これをただの娯楽映画としてジャンル分けすることには何の意味もないだろう。蛇足だが、終幕の愚連隊が大敵に挑む戦いと、一人生き残った大久保軍曹が馬賊に仲間入りするラストは、ワタクシに「ワイルドバンチ」を思わせたのだった。呑気呆亭